慶応義塾大学・中川研究所・三井住友建設が可視光通信を用いた3次元位置計測システムを共同開発

― 最先端の通信技術である可視光通信と土木の測量技術の融合 ―

慶応義塾大学、株式会社中川研究所(東京都品川区西五反田2-15-9 社長 松村友邦)、三井住友建設株式会社(東京都新宿区西新宿7-5-25 社長 五十嵐久也)の1大学、2社は、可視光通信を用いた3次元位置計測システムを共同で開発しました。
可視光通信とは、目に見える「光」を高速点滅させることでデジタル信号を伝達する最新の通信技術で、照明を用いた案内情報配信実験が関西国際空港で行われるなど、様々な分野で実用化に向けた開発が進んでいます。

今回開発したシステムは、LEDを光源として測量ポイントに設置し、デジタルカメラで撮影することで、複数の点の3次元座標を一括かつ短時間で測量するシステムで、これまでの測量が苦手としていた夜間の測量や測量の自動化にも効果を発揮するものです。

■可視光通信とは

可視光通信は、目に見える光「可視光」を使用して高速データ通信を行う、日本発の最先端通信技術です。LED等の照明機器を目には感じられないほどの高速で点滅させることによって、大容量のデータ通信が可能で、以下のような特徴を有しています。

・通常の照明機器に通信機能を付加するだけで通信環境が整備可能。

・通信範囲が目で確認できる。

・電磁波などのように人体に影響を与える心配がない。

・精密機械への影響もなく、病院などでも使用可能。

現在は、LEDなどの可視光素子を照明や信号機、電光掲示などに利用しつつ、データ発信も同時に行う高速、安全でユビキタスな可視光通信システムについて、可視光通信コンソーシアム(会長 慶應義塾大学 中川正雄教授、http://www.vlcc.net/)を中心に研究、開発、標準化、普及の取り組みがなされています。

■システム概要

今回開発した3次元位置計測システムは、市販の高解像度デジタル一眼レフカメラと画像解析用のパソコンおよび標点となるLED光源から構成されています。まず、座標がわかっている基準点用光源と、計測したい位置に測量点用のLED標点を設置し、それら全体をデジタルカメラによって任意の2カ所より撮影します。その撮影データを連結しているパソコンに取り込み、画像解析を行うことによって各光源の位置の算出およびID番号を受信します。2カ所から撮影したデータを用いて、各測量点の3次元座標を算出します。

試作機による模擬測量実験の結果、現在使用されている測量機器と同程度の精度を有することを確認しました。


写真-1 実験の計測状況

写真-2 実験で用いた光源

■特徴

本システムの特徴としては、以下のことが挙げられます。

・市販のデジタルカメラ、パソコンと簡易なLED光源のみを利用してシステム構築可能。

・暗闇でも計測可能。

・多数の点を同時に短時間で計測可能。

・一度光源を設置すれば、測量の度に人が測点に行く必要がない(安全性の向上、省力化)。

・安価に自動計測が可能。
・計測データはデジタル出力なので、測量データの他での利用も容易。

■システムの適用性

・橋梁建設時の形状管理:
これまでの測量は、全ての測点を1点ずつ計測していくので、大規模な橋梁などでは測量に時間がかかっていました。特に、斜張橋などでは日照などの影響により、構造物の温度が逐次変化し、それに伴い橋梁が変形するため、測量に時間がかかることは測量誤差の拡大にもつながっていました。また、測量点を機械で視準する関係より、夜間など暗闇での測量は困難でした。一方、今回のシステムは、多くの点を一度に測量できるとともに、一度LED光源を設置すれば、それ以降は測量点に人が行く必要がないため、省力化につながります。また、夜間に自動撮影を行うことにより、構造物の温度が一番安定している同一時刻に全ての点を測量できるので、精度向上にもつながります。

地すべり地帯の自動観測:
地すべり地帯などにLED光源を設置し、一定間隔で自動撮影をすることにより、地すべりを常時監視することが可能となります。また、測量の度に作業員が測点に行く必要がないため、安全性も向上します。

トンネルの動態観測:
トンネル構内で変状が懸念される部位にLED光源を設置しておき、一定間隔で自動撮影して、そのデータをネットワーク経由で監視室などに伝送することにより、遠隔的に変状監視を行うことが可能となります。


図-1 橋梁の形状計測イメージ

■今後の展望

今後は実構造物での検証実験を行い、実用性と精度の確認を行った後、実施工へ展開し、橋梁やトンネルなどの建設時の精度向上、省力化、安全性向上に貢献するツールとして活用していく予定です。さらに、GPSの電波が届かないトンネル内や長大橋の桁の中におけるポジショニングシステムとしても展開し、道路のアセットマネジメント支援ツールとしても、適用の拡大を目指してまいります。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

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