「三井住友建設のハイブリッドRC超高層オフィスビル」を提案・営業展開

― 鋼材高騰による事業者の建設投資リスクを低減 ―

■概要

三井住友建設株式会社(東京都新宿区西新宿7-5-25 社長 五十嵐 久也)は、高品質・高機能構造物に関する研究開発推進の一環として、オフィス建築の新商品として「三井住友建設のハイブリッドRC超高層オフィスビル」を提案してまいります。
これは、当社の得意技術であるRC造超高層住宅技術、免震・制震技術およびプレストレストコンクリート技術を更に展開するとともに顧客ニーズに応え適切に組み合わせ、一般的に設計及び施工例の多いS造オフィスビルに対し、経済性・環境面で優れた高品質なRC造オフィスビル建設を提案するものです。

■背景

わが国のオフィスは、これまで鉄骨造(S造)で建設することが一般的でした。これは、オフィスに求められるフレキシブルで効率的な執務空間を生み出すために、無柱の大空間を作りやすいS造が構造形式として適していることによります。また鉄鋼材料の安定供給によりコストや工期、施工効率の良さがあわせて評価されていました。しかしながら、昨今の建設資材需給が逼迫している状況下では、調達面や経済性の面でS造の良さを必ずしも引き出せないケースが出始めています。
これに対し、鉄筋コンクリート造(RC造)は、使用する資材(鉄筋、コンクリート材料)の調達・加工などに要するリードタイムが一般的にS造と比較して短く、コスト変動幅も小さいため、工期やコスト面で事業者の建設投資リスクを低減することができることに着目しました。
以上の背景のもと、三井住友建設株式会社では2007年11月より社内プロジェクトを組織し、S造の長所を維持しながらRC造の良さを活かすオフィスビル建設の技術開発・研究に取り組んでまいりました。

■ハイブリッドRC超高層オフィスビルの開発

RC造は一般的に、柱間隔(スパン)の大型化が困難なために無柱大空間がつくりにくい・柱の本数や柱の外形寸法が大きくなることにより執務空間の使い勝手の制約が大きい・梁に多く貫通口を設けることが構造上難しいために空調システムに制約が生じるなどの解決すべき課題があり、またS造と比べ工期が長いと言われております。そのため、スパンがあまり大きくなく低層の小規模なオフィスビルや、斬新なデザインを採用したオフィスビルを除いてRC造でオフィスビルを計画することは敬遠されていたという状況にありました。
これらの技術的課題に対し当社は、建築分野で得意としているRC造超高層住宅で培ってきた「高品質化プロセスノウハウ」・「プレキャスト(PCa)工法」・「免震・制震技術」などの建設技術と、土木分野で得意としているPC橋梁で多くの実績を残す「プレストレストコンクリート(PC)技術」を融合し、SRC造やS造をも取り入れたハイブリッドRCオフィスビルに応用することで解決致しました。

1. 品確法・住宅性能表示性能などで鍛えられた高品質化プロセスノウハウ

超高層集合住宅には様々な技術が取り入れられ、その施工プロセスの複雑さは他用途の建物の比ではありません。
当社では躯体工事において、躯体の構築をより効率的にしかも正確に行うために、工場で行われているオートメーションと呼ばれている生産工程の概念を建設現場へ展開した 「DOC工法」や、膨大な資材搬入をトータルにマネジメントする「SCM(サプライチェーンマネジメント)」の建設現場への導入など、体系的な現場管理手法にいち早く取組んでいます。また、RC造超高層建物の建設はタワークレーンのフロアークライミングが必須ですが、当社は比較的大型のタワークレーンを対象とした経済性と短工期を両立させた独自のフロアークライミング方式を開発し複数の大型現場で展開しています。
さらに、当社では集合住宅の施工時においてオフィスビルにおける仕上げ作業工程の数倍に及ぶ複雑な仕上工事管理の技術として、仕上工事工程を流れに沿ってタクト化し、それぞれ検査工程を組み込みながら合理的に管理する、「総合仕上げ管理システム」を各建設現場へ既に導入され定着いたしております。
また、住宅の建設に関しましては、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)や住宅性能表示対応など、近年要求品質のグレードが著しく高くなりつつあります。当社ではこの高品質に答える独自技術として、QSI制度(現場品質検査官制度 Quality / Safety / Inspectorの略)・「住宅高品質・高機能化委員会」などの高品質を堅持するソフト的な仕組みを始め、最新のIT技術を利用したインターネットによる検査情報の公開など所謂「見える化品質管理」に代表されるハード的な技術まで、様々なノウハウを豊富に有しており、RC造超高層住宅の施工では業界NO.1クラスの実績を有するに至っております。
これらのノウハウは住宅以外の建物に十分転用可能なものであり、RCオフィス分野に展開致します。

2. プレキャスト技術による高品質・工期短縮

投資期間が長期化するような長い建設工期の設定が容認されない昨今の事情のなか、S造と同等の工期を実現するために、RC造の建設工期短縮手法として、超高層住宅で実績が豊富なプレキャストコンクリート(以下PCa)工法を適用致します。
当社では5年ほど前より、柱・梁の主要構造部材に現場打ちコンクリート接合部をほとんど設けないPCa工法である「スクライム(SQRIM)工法」を開発し広く展開しております。本工法を採用した場合、現場でのコンクリート打設工程をなくすことができるため、S造と同じ施工工程が実現でき、大幅な工期短縮が可能となります。本工法を採用した場合の基準階施工工期は、建物規模にもよりますが1フロアーあたり3日ないし4日が標準となり、施工条件が満たされる場合にはそれ以上の日数短縮も可能となります。
また、超高層となるにしたがいますます高強度化するコンクリートを、品質管理の行き届いたPCa工場にて全て製作することにより高品質な構造躯体とすることができ建物全体の高品質を維持する上でのメリットも享受することが可能となります。
さらに、従来は現場でのコンクリート強度別の打ち分けが困難であるため、床を含む全ての建物部位に比較的高価な高強度のコンクリートを打設する方法が多く採られておりますが、本工法では柱梁部材の大部分をPCa部材とすることにより、床など各々の部位に適したコンクリート強度とすることができるため、この点で経済性に優れていると言えます。
さらにRC造の特徴を活かしアウトフレームデザインとした場合、外周部の柱梁に現場打ち部分がないため、無足場施工を実現することができ、より一層の経済性・工期短縮を実現します。

3. 免震・制震技術による安全性、居住性

ここ近年、BCP(事業継続計画)はオフィスビルでも重要視されつつあります。大地震や台風による振動エネルギーを制震装置(ダンパー)に吸収させることで、更に進んだ高い安全性・居住性を実現します。
当社は免震・制震分野において最も長い実績を有しており、独自に開発・実用化した多くの制震装置及び構法の中から、立地条件や要求性能、コストバランスなどを考慮し最適な免震・制震建物を提案します。

4. PC技術による大スパン化

プレストレストコンクリートを利用したPC橋梁のシェアでは当社はトップクラスの実績があり、多くの技術的・施工プロセスノウハウを有しています。
このPC技術を応用し、オフィスの執務空間に架ける大梁、スラブには「大スパン連続有孔PCaPC梁」、「大スパンリブ付きPCaPCスラブ」を適用し、無柱大空間を実現します。
オフィスでは執務者にとって快適で健康的な温熱環境とするために、大梁には空調設備用の開口を複数設けることが必要です。RC造の梁ではS造と同じ大きさ・数量の設備開口を設けることが構造上困難ですが、RC造で可能な限りの設備開口を設けた「大スパン連続有孔PCaPC梁」と、これに「大スパンリブ付きPCaPCスラブ」を組み合わせて床組を構成することにより、要求に応えることを可能にしました。

ハイブリッドRC超高層オフィスでは、様々な平面プラン・建物高さに応じて、最適な構造方式を採用します。30階クラスまでの中層~超高層オフィスでは純RC造とし、40階クラスでは制震構造を併用したRC造や下層階の一部に小断面の鉄骨を用いたSRC造を採用するなどの最適なハイブリッド技術の選択により耐震性能を確保するとともに、機能性・居住性に支障のないような躯体寸法の縮小化を図ります。

■ハイブリッドRC超高層オフィスビルの特長

「ハイブリッドRC超高層オフィスビル」は、以下のような特長を有しています。

  • S造に比べ風揺れ、歩行振動、遮音性に優れており住宅並みの居住性を有しています。
  • PCa工法の採用により、S造と同等の短工期を実現します。
  • 大スパン連続有孔PCaPC梁と大スパンリブ付きPCaPCスラブの適用により、構造階高をS造と同等以下に抑えて天井高を確保し、適切な設備配置や配管・ダクトルート、および設備の日常的な保守点検スペースを確保します。また、将来の設備更新に対する柔軟性を提供します。
  • S造に比べて気密性が高く、構造躯体の熱容量が大きいという特徴を生かし、室内温度変化の少ない環境の提供や、夜間の安価な電力を用いる「躯体蓄熱空調システム」の併用など、要求に応じた空調方式を提供します。
  • S造と同様にガラス、メタル、プレキャストコンクリートなどの様々なカーテンウォール外装材を用いるほか、RC造の構造体を前面に出すなど多彩な外観デザインを可能にします。
  • S造の場合に必須である耐火被覆がRC造の場合必要でないため、耐火被覆の苦渋作業や粉塵対策の必要性が無くなります。また、事務所ではテナントの入替により頻繁に発生するリニューアル工事においても同様の対策が不要であり、環境面でより一層の配慮が必要とされるリニューアル工事には特に優位性を発揮します。
  • 建築資材原材料の需給バランスと、地下資源の国際間獲得競争の沈静化を見込めないという将来予測の元で、今後の経済的な優位性が期待できます。

また、すべてを海外からの資源に頼っている鋼材に対して、コンクリートの原材料であるセメント・骨材はそのほとんどが国内資源です。さらにセメントは「リサイクルの優等生」と呼ばれるように、再利用資源・環境廃棄物資源を広く活用していることで知られています。RCオフィスはエコ・環境の面でもこれからの可能性を秘めていると考えています。

■今後の展開

三井住友建設は、従来よりRC造超高層建物に関して数多くの実績・開発を積んできました。今般実用化した「ハイブリッドRC超高層オフィスビル」は、今後ますます複雑かつ激しく変化するであろう社会経済環境に対応する、オフィスビル建築市場への一つの提案です。
本提案は、新しいオフィスビルのプロトタイプとして低層から超高層のオフィスビルにまで幅広く適用することが可能です。中低層のオフィスビルに関しては、特に事業の企画初期段階から着工までの事業計画期間や、経済的な投資時に想定されるリスクヘッジに対して、また高層から超高層のオフィスビルの場合には、それに加え工事着工から竣工段階までの建設期間中に想定されるリスクヘッジに対してその効果を大いに発揮するものと考えています。
今後もさらに新たな技術開発を続け、既存の技術とも組み合わせながら、時代のニーズにマッチしたオフィスビルを提案・展開していく方針です。


図1 ハイブリッドRC超高層オフィスの外観例


図2 低層~40階ハイブリッドRC超高層オフィスの平面プランイメージ

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

一覧ページへ