占冠(しむかっぷ)トンネル

三井住友建設株式会社(東京都新宿区西新宿7-5-25 社長 五十嵐久也)は、東日本高速道路株式会社発注の北海道横断道占冠(しむかっぷ)トンネル西工事の避難坑(NATM)において、遠心力トンネル吹付け工法を用い、施工総延長3,000m、設計吹付け総量7,000m3超を達成しました。エアーを用いない回転系吹付け方式による連続施工実績としては、我が国最長の記録です。

NATMに適用される吹付け工法では、通常エアー式吹付機を用いますが、遠心力トンネル吹付け工法はエアーの代わりに回転する円盤の遠心力を利用して機械的に吹付けを行うもので、粉じん発生が少ないことが大きな特長です。

■背景

占冠トンネル西工事の避難坑は、本坑に沿って構築する掘削断面19m2のトンネルです。このトンネルはNATMを採用しているため、コンクリート吹付け工が組み込まれていますが、吹付け時に発生する粉じんが、坑内作業環境に最も悪い影響を及ぼします。

平成12年、厚生労働省より「ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドライン」が発行され、坑内の粉じん濃度に関し、切羽後方50m地点で3mg/m3以下の規制値が定められました。これにより、事業者は規制値を遵守し坑内作業環境を良好に保つことが求められました。ただし、中小断面トンネルに関しては粉じん濃度規制値を遵守することが一般的には難しいとされており、「(規制値を)達成することが困難と考えられるものについては、できるだけ低い値を目標レベルとすること」という解説が加えられていました。

しかし、この規制は、平成20年3月1日から施行された「粉じん障害防止規則の一部改正する省令」(平成19年厚生労働省令第143号)により更に強化され、「可能な限り、3mg/m3に近い値を粉じん濃度目標レベルとして設定し・・・」と改められました。

このような背景から、中小断面トンネルではNATMを採用した場合、粉じん濃度規制値を遵守することが困難であるため、在来工法で施工されることがあります。今回の記録達成によりNATMの適用範囲が拡大されると考えられます。

■当社の取り組み

当社は、この粉じん問題を解決するため、粉じん発生量が少ない遠心力トンネル吹付け工法を開発し、数現場の試験施工を経て当トンネルに本格導入しました。当トンネルでは送・排気組み合せ方式の換気設備のもと、粉体急結剤と標準配合のコンクリートを用いて、中小断面トンネルでは困難とされる規制値「切羽後方50mで3mg/m3以下」を満足することに成功(計測結果は最大値:2.9 mg/m3、最小値:1.8 mg/m3)しました。

2005年3月に当トンネル工事に着手して以来3年にわたる運用を行い、2008年4月末に施工を完了しました。この間、多量の湧水や地山膨張などの各種変状を含む地山不良箇所にも遭遇しましたが無事に通過できました。

基本的な吹付け材料は、標準配合のコンクリートを用いましたが、変状箇所では高強度コンクリートやフライアッシュ添加コンクリートを用いた施工も行い、材料に対する汎用性を確認しています。同時に遠心力吹付機の改良を進め、耐久性の向上、軽量化などを図り、実用化と共に長期的な信頼性の確保にも目途をつけ、所期の目標を達成しました。

■今後の展望

遠心力トンネル吹付け工法は、実績のある粉体急結剤と標準配合の吹付け材料を用いるため取り扱いが容易なこと、粉じん発生量がわずかであり粉じん濃度規制値を満足できることが大きな特徴のトンネル吹付け工法です。

このたび、占冠トンネル西工事において、遠心力吹付機の実用性・信頼性や施工品質に関わる数々の改良を重ねることで、我が国最長の連続施工記録を達成し、吹付け工法としての長期的な施工信頼性を実証しました。

今後、取り扱いが容易で、大幅な作業環境改善が図れるという優れた特徴を活かし、需要の多い道路トンネル向けに適用拡大を推進していくとともに、総合評価方式の入札において、本工法を積極的に提案していく方針です。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

【遠心力トンネル吹付け工法 関連写真】


写真-1 遠心力吹付機の全景


写真-2 坑内待機中の吹付機


写真-3 吹付け作業

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