「U桁リフティング架設工法」を開発、大規模高架橋建設工事に適用

― 第二京阪道路 茄子作(なすづくり)地区PC上部工事 ―

■概要

三井住友建設株式会社(東京都新宿区西新宿7-5-25 社長 五十嵐 久也)は、大規模な都市内高架橋におけるコストダウンや周辺環境への影響軽減が可能な「U桁リフティング架設工法」を開発し、第二京阪自動車道茄子作地区PC上部工事に適用しました。

U桁リフティング架設工法は、U形断面のプレキャストコンクリート桁を、リフティングガーダーにより橋脚に近い位置で吊り上げて一括架設することで架設用ガーダーの重量を大幅に低減する、合理的な橋梁架設工法です。

また、従来のプレキャストセグメント工法では、工場などでプレキャスト桁を製作していましたが、本工法では現場ヤード内で製作することで、大型トレーラーの出入りなど、周辺環境に与える影響を軽減できることも大きな特徴です。

本工法の適用により、従来の施工法に比べ、工期を大幅に短縮するとともに1割程度のコストダウンを実現し、技術者一人当たりの生産性を約2倍に向上させました。

■技術開発の経緯

支間や桁高が比較的均一に計画された大規模な都市内高架橋の建設には、これまでは工場製作プレキャストセグメントを1支間ごとに一括して架設するスパンバイスパン(Span by Span)工法に代表されるプレキャスト工法が、高品質化や工期短縮などの点で有利であると考えられてきました。

しかし、支保工により橋体を施工することができる架橋地点では、従来のスパンバイスパン工法ではコスト的に優位性を発揮しにくかったことから、プレキャストコンクリートの高品質を活かしたコスト競争力のある工法が求められていました。

すなわち、従来のスパンバイスパン工法では、1支間分全てのプレキャストセグメントを架設ガーダーで空中に吊り上げた状態(セグメントの全重量を架設ガーダーが受けた状態)で、プレストレスを与えて主桁を一体化させなければならないために、非常に大きな架設ガーダーが必要になり、これがコストアップの一因ともなっていました。

これに対して、このたび開発したU桁リフティング架設工法では、1支間分の長さのプレキャスト桁を製作しておき、これをリフティングガーダーを用いて、橋脚に近い、すなわち支持点に近い位置で吊り上げて一括架設することにより、ガーダーに作用する曲げモーメントを極めて小さく抑えることを可能にしました。(「スパンバイスパン工法」を「一括吊上げ工法」に変えることのメリット)

さらに、当社が第二名神高速道路の古川高架橋(2002年完成)で実用化したU形断面の桁構造を適用することで、上床版を後からの施工として吊上げ重量を一層軽減し、ガーダーに作用する曲げモーメントを従来のスパンバイスパン工法の約1/6に低減させました。(「一括吊上げ工法」を「U桁リフティング工法」にブラッシュアップすることのメリット)

このように、コスト競争力のあるプレキャスト工法というニーズに対するソリューションが、U桁を橋脚に近い位置で吊り上げて一括架設する「U桁リフティング架設工法」です。

■U桁リフティング架設工法とは

U桁リフティング架設工法は、U形断面のプレキャストコンクリート桁を、リフティングガーダーにより橋脚に近い位置で吊り上げて一括架設する工法です。

■U桁リフティング架設工法による施工

本工法の施工は、以下の6段階で行います。

STEP 1 橋体を支える支承を設置します。
STEP 2 プレキャスト柱頭部(橋脚直上の主桁)を設置します。
STEP 3 柱頭部横桁へコンクリートの打込み
STEP 4 U形プレキャスト桁の一括架設 (1支間分の長さの桁を一度に吊り上げます)
STEP 5 上床版施工用のPC版を敷設します。
STEP 6 上床版の場所打ち部にコンクリートを打ち込みます。

本工法は、下床版とウェブで構成されたU形桁1支間分を一括で製作し、大型トレーラーで場内を運搬した後、柱頭部セグメント上に設置したリフティングガーダーを用いて一括吊上げします。支間42mの茄子作工事では、U桁の最大重量は240トンです。


U桁の場内運搬


U桁のリフティング架設

■U桁リフティング架設工法の主な特徴

・コスト縮減
従来、割高と言われてきたプレキャスト工法ですが、本工法は、経済的な支保工施工に対してもコスト競争力を有する画期的な工法です。

・工期短縮
U形桁は、現場ヤードで1支間分を一括製作し、リフティングガーダーを用いて一括架設するため、大幅な工期短縮が図れます。

・広大な施工ヤードが不要
U桁の製作サイクルと架設サイクルを同一日数として、連続的に施工することで、プレキャスト桁の広大なストックヤードを必要としません。

■第二京阪自動車道茄子作(なすづくり)地区PC上部工事への適用

U桁リフティング架設工法は、国土交通省近畿地方整備局が事業を進めている第二京阪自動車道茄子作地区PC上部工事ではじめて適用されました。

同工事は、総合評価落札方式で入札され、当社がU桁リフティング架設工法などの技術提案を行い、これが採用されたものです。

■第二京阪自動車道茄子作地区PC上部工事

架橋位置 : 大阪府枚方市
構造形式 : 20径間連続4主桁箱桁橋
橋  長 : 790 m
支  間 : 32.25 ~ 42.00 m
工  期 : 2007年3月 ~ 2009年3月

■今後の展望

当社は、これまでにもプレキャスト技術を活用した高品質かつ経済的で、さまざまな架橋条件に最適な構造形式や架設工法を数多く開発してきました。

このたび実用化したU桁リフティング架設工法は、桁下の空間を使用できる大規模高架橋の建設に最適な工法であり、今後の適用拡大が大いに期待されます。

一方、現場ヤードが比較的狭く、桁下空間を自由に使用できない条件下での架橋技術の開発も実用段階に入っており、当社では、技術者一人当たりの生産性を向上させながら、さらに幅広いニーズに応えることのできる構造形式と架設工法のラインナップを展開していく方針です。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

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