"気泡ソイルセメント柱列壁工法"を開発、水処理設備工事において実証

■概 要

三井住友建設株式会社(東京都新宿区西新宿7-5-25 社長 五十嵐 久也)と株式会社竹中土木(東京都江東区新砂1-1-1 社長 竹中 康一)は、早稲田大学、有限会社マグマ、太洋基礎工業株式会社とともに、環境負荷低減効果の高い土留め壁(柱列式連続壁)工法である"気泡ソイルセメント柱列壁工法"を共同開発しました。

気泡ソイルセメント柱列壁工法は、注入するセメントミルク量と発生する泥土量を低減させることのできる気泡を加えながら地盤をオーガーで連続掘削し、その溝中にセメントミルクと土を混合した壁を構築する工法です。

このたび、実証試験において建設汚泥発生量を従来工法の最大40%程度削減し、環境負荷を低減することができるとともに、建設汚泥処分費およびセメントミルク材料費の削減によりコストも大幅に縮減できることを確認しました。

■技術開発の経緯

建設現場の掘削工事から生じる建設汚泥 注1) は、年間約750万トンに達するといわれています。この建設汚泥の再資源化率 注2) は75%と、他の建設廃棄物に比べて低い水準にとどまっており、約190万トンが最終処分場で処分されています。これは建設廃棄物全体の最終処分量600万トンの約3割も占めていることに加えて、産業廃棄物最終処分場の残余年数が約7.7年(平成17年度現在、環境省調査)となっている背景もあり、建設汚泥量の削減は喫緊の重要課題となっています。

このようなニーズを受け、土木や建築の開削工事における建設汚泥を削減する目的で、その主な発生源となっている柱列式連続壁の泥土発生量を大幅に削減できる"気泡ソイルセメント柱列壁工法"の開発に取り組んできたもので、このたびの実証試験で所期の目的を達成することができました。

注1) 建設工事に係る掘削工事から生じる泥状の掘削物および泥水のうち産業廃棄物として取り扱われるもの。
注2) 建設工事等の資材または材料として再利用できるようにする割合

■従来技術の概要

従来の柱列式連続壁工法は、セメントミルク 注3) を注入しながら地盤をオーガーで連続掘削し、土中にソイルセメント壁 注4) を構築します。多量のセメントミルクを注入するため、壁構築後に掘削体積の60%~90%の泥土が発生し、産業廃棄物(建設汚泥)として処分します。

注3) セメント・水を混合した注入液
注4) セメントと土を混合攪拌し、壁状に固化したもの

■"気泡ソイルセメント柱列壁工法"の概要

"気泡ソイルセメント柱列壁工法"は、注入するセメントミルクと発生する泥土の量を低減させることのできる気泡を加えながら地盤をオーガーで連続掘削し、その溝中にソイルセメント壁を構築する工法です。

従来工法では、削孔・攪拌時において地盤の流動性を高めるために多量のセメントミルクを注入していましたが、本工法では、削孔時に注入する気泡のベアリング効果で地盤の流動性を高めることができるため、注入液中の水分量を減らして泥土発生量を削減することが可能となります。

オーガーの引上げ時には、気泡を消すことでさらに泥土発生量を少なくし、環境負荷を低減するとともに、産廃処分費を大幅に削減することができます。

気泡ソイルセメント柱列壁工法施工要領図
図-1 気泡ソイルセメント柱列壁工法施工要領図

プレフォーミング気泡
図-2 プレフォーミング気泡
ベアリング効果概念図
図-3 ベアリング効果概念図

■"気泡ソイルセメント柱列壁工法"の効果

柱列式連続壁を用いた開削工事、遮水壁築造工事に"気泡ソイルセメント柱列壁工法"を適用することにより、以下の効果が期待できます。

(1)環境負荷の低減

  • 従来の柱列式連続壁工法と比較して、建設汚泥発生量を大幅に削減できます。
  • セメントミルクに使用する材料(セメント・水)を50%程度削減できます。

(2)経済性の向上

  • 従来の柱列式連続壁工法と比較して、セメントミルクの使用材料および泥土発生量の大幅な削減により、材料・排泥処理のコストが30%程度縮減できます。

(3)品質の向上

  • セメントミルクと地盤との混合攪拌性が向上して流動性が高まるため、ムラがなく均一な品質を有するソイルセメント壁が施工できます。

■実証試験

このたび、水処理設備工事の土留め工事において実証試験を実施し、従来工法に対して以下に示す優位性を確認することができました。

  • 泥土発生量が最大40%程度減少
  • 芯材の挿入性が大幅に向上
  • 掘削機に作用するトルクが小さくなり、施工性(混練削孔性)が向上
  • 透水係数が1オーダー小さくなり、遮水性が向上
プレフォーミング気泡
写真-1 気泡吐出の状況
ベアリング効果概念図
写真-2 削孔の状況

■今後の展望

気泡ソイルセメント柱列壁工法は、柱列式連続壁工事における環境負荷低減および建設コストの縮減が可能となる工法です。さらに、実証試験により遮水性の向上も確認されたことから、ソイルセメント壁の品質向上も期待できます。

今後、さらなる建設汚泥発生量の削減に向けてセメントミルク・気泡・消泡剤の配合に改良を加えていくとともに、道路・地下鉄・処理場や建築物地下室等の構築に伴う柱列式連続壁工事、貯水池・地下ダム等の遮水壁工事を対象に本工法を積極的に提案することにより、建設工事の環境負荷低減およびコスト縮減に貢献していく方針です。

 

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