小断面トンネル リニューアルシステム工法 を実用化

三井住友建設株式会社(東京都新宿区西新宿7-5-25 社長 五十嵐 久也)は工業用水や農業用水などの水路トンネル補修を効率的に行える"小断面トンネル リニューアルシステム工法"を実用化し、営業展開を開始しました。

"小断面トンネル リニューアルシステム工法"は、これまで対応が難しかった小断面トンネル内でも恒久的な安定化対策を道路トンネルなどと同等の品質で短時間に施工可能な、モールボルティング(MOLE-Bolting)工法、モールグラウト(MOLE-Grout)工法などから構成された"システム工法"です。

本システム工法を、断面積2m2未満の極小断面トンネルや、延長3kmの小断面トンネルなどの補修に適用することで、良好な施工性を実証しました。

■背 景

高度経済成長期に建設された発電所水路トンネルや工業用水路トンネルの多くは、供用開始後40~50年を経て老朽化が進み、維持・補修対策が必要とされています。これらのトンネルのほとんどは仕上がり断面が10m2未満の小断面であることに加えて、補修作業が可能な通水停止期間が短く、1週間程度しか許されない場合もあります。

このため、トンネル覆工の構造ひび割れ補修や覆工背面空洞充填などの根本的な補修が必要なトンネルでも、工事条件の制約から漏水対策や覆工表面補修などの対処療法的な補修しか行われてこなかったのが現状であり、補修に必要な"作業空間"と"時間"が大きな制約条件となっていました。

■"小断面トンネル リニューアルシステム工法"の特徴

このたび実用化した"小断面トンネル リニューアルシステム工法"は、モールボルティング(MOLE-Bolting)工法、モールグラウト(MOLE-Grout)工法、モールアラミドシート(MOLE-Aramid Sheet)修復工法という3種の高効率施工法から構成され、品質を確保しながら各工法の相乗効果により時間効率の最大化を目的に開発した"システム工法"です。

モールボルティング(MOLE-Bolting)工法は、狭小なトンネル内からでも覆工を断面幅以上の長尺ロックボルトにより短時間で地山に縫い付けることのできる工法です。
モールグラウト(MOLE-Grout)工法は、超長距離圧送により覆工背面空洞を短時間で充填できる工法です。

モールアラミドシート(MOLE-Aramid Sheet)修復工法は、作業性のよいアラミドシートを用いて短時間で覆工断面を修復できる工法です。

"小断面トンネル リニューアルシステム工法"は、これらの要素技術を、補修対象とするトンネルの損傷・劣化状況に応じて組み合わせることで、小断面トンネルの安定性を恒久的に確保できる補修・補強を可能とするシステム工法です。施工性の悪い狭隘な作業空間で使用できる新開発の軽量・小型の施工機械群と、臨時配管・配線による動力や材料の供給により、通常断面トンネルと同等の品質と時間効率で補修作業が可能な点に特徴があります。

また、補修・補強工事に使用する配管・配線に関しても、急速敷設・撤去工法を開発し、短期間での補修作業を可能としました。

さらに、坑口が急傾斜地などに設置され、近傍に施工ヤードが確保できない小断面トンネルでも、長距離急勾配配管による充填材や空気の圧送により施工が可能なため、ほとんどの小断面トンネルで効率的な施工が可能です。

■"小断面トンネル リニューアルシステム工法"の各要素技術の概要

(1)モールボルティング(MOLE-Bolting)工法

モールボルティング工法は、特殊な高出力小型削岩機と継ぎノミ方式により、高効率にトンネル幅以上のロックボルトを縫い付けることのできる工法で、狭い断面のトンネル内から、構造ひび割れの生じたトンネル覆工を地山に短時間で縫い付けることが可能です。

断面積3m2未満の極小断面トンネルでも、大規模な覆工構造ひび割れを短時間で効率的に補強・補修することができます。

モールボルティング工法の特徴は、以下のとおりです。

  • トンネル幅より長いロックボルトでも、トンネル断面方向に向けて高効率に打設可能です。
  • 一つの削岩機で、硬岩を対象とした比較的短いロックボルト(打設長2.0m程度)と孔荒れの激しい地山を対象とした自穿孔ボルト(打設長4m程度)の施工が可能です。
  • 削岩機は、強度150kN/mm2程度の硬岩までの穿孔が可能です。
  • 削岩機は、小型・軽量で、分割が可能なため狭い坑内での運搬・組立てが容易です。

(2)モールグラウト(MOLE-Grout)工法

モールグラウト工法は、超長距離圧送による覆工背面空洞充填工法で、坑外から充填材を長距離圧送することで、高効率に覆工背面の空洞を充填することができます。

延長3km程度までの超長距離圧送が可能で、山間部などで大型充填設備の搬入できない極小水路トンネルのトンネル覆工背面も、短時間で効率的に充填することが可能となりました。また、新しく開発した充填材は湧水下でも分離せず、確実に充填材が固化します。

モールグラウト工法の特徴は、以下のとおりです。

  • 本工法のために開発された充填材は、長距離圧送が可能(3km程度まで)で、坑外からの充填作業が可能なため、現場での施工効率を大幅に向上させることができます。
  • 可塑状態を長く保持できるため、トンネル覆工背面の隅々まで浸透し、優れた空洞充填性・施工性を発揮します。

(3)モールアラミドシート(MOLE-Aramid Sheet)修復工法

モールアラミドシート修復工法は、作業性のよいアラミドシートを用いて覆工劣化部を高効率に補修する工法です。高強度の二方向アラミドシートを、非有機系溶剤により覆工表面に貼付することで、短時間に劣化した覆工表面を補強することができます。

本工法により、換気条件が劣悪な小断面トンネルでも、劣化した覆工表面の補強を大断面トンネルと同等の品質・効率で実施することができます。

モールアラミドシート修復工法の特徴は、以下のとおりです。

  • アラミドシートは、炭素繊維シートよりも柔軟性に富み作業性がよく、施工効率を大幅に向上させることができます。

なお、アラミドシートとは、高強度で耐久性に優れたアラミド繊維を編んだシートです。アラミド繊維は、宇宙、航空機などから防弾チョッキ、タイヤなどに至るまで幅広く使われている"ハイテク繊維"です。

■今後の展望

小断面トンネル リニューアルシステム工法は、施工可能期間に大きな制約のある小断面水路トンネルにおいても、短期間で恒久的なリニューアルを可能とするシステムです。

今後、さらなる効率化に向けて改良を図るとともに、当社の保有する各種トンネル調査技術を組み合わせ、BCP (事業継続計画:Business Continuity Plan)を見据えた小断面水路トンネルのライフサイクル・マネジメントの提案に取り組んでいく方針です。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

【小断面トンネル リニューアルシステム関連写真】

写真-1 モールボルティング工法用高出力小型削岩機
写真-1 モールボルティング工法用
高出力小型削岩機
写真-2 モールボルティング工法で補修された坑内
写真-2 モールボルティング工法で
補修された坑内
写真-3 モールグラウト工法施工状況
写真-3 モールグラウト工法施工状況
写真-4 モールアラミドシート修復工法施工状況
写真-4 モールアラミドシート修復工法施工状況

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