ミックPCa構法による超短工期施工を実証

― 上部躯体 1フロアー3日のシステム施工 ―

三井住友建設株式会社(東京都新宿区7-5-25 社長 五十嵐 久也)は、物流倉庫などの建物において、工期短縮などの事業主のニーズに応えるべく、既開発の「ミック構法」の施工技術開発を進め、高い品質を確保しつつ更なる短工期・施工性向上を実現する「ミックPCa構法」採用による施工サイクルシステムを新たに実証しました。このたび、本構法を千葉県八街市の文書保管専用倉庫(4階建1棟:「((株)テイソウ千葉営業所八街2号倉庫」)の新築工事に適用し、同構法での躯体構築1フロアー3日サイクルにより大幅な工期短縮の効果と良好な施工性を実証しました。

*ミック構法(Mitsui Sumitomo Integrated Composite System)
  :柱が鉄筋コンクリート造(RC造)、梁が鉄骨造(S造)のハイブリッド(混合)構造

*ミックPCa構法:RC柱部をプレキャスト化したもの

■背 景

近年、建設材料費の市場価格が大きく変動していることに伴い、従来の大スパン構造の主流である鉄骨造に代わる構法として柱をRC造、梁をS造等とするハイブリッド構造が注目されています。物流施設・生産施設など大規模な建物の需要において、当社の開発したミック構法は、物流倉庫やショッピングセンターなど幅広い用途に適用できる短工期でコストメリットのある構法として、多くの実績を重ねてきました。しかし近年の物流倉庫等では、事業工期が厳しく限定されるなど事業主のニーズは多様化・高度化し、それに応じて構法選択の幅を広げる要求から、ミック構法(ミックPCa構法)についてもさらなるバージョンアップを追求していました。

■ミックPCa構法とは

ミック構法は、柱を鉄筋コンクリート造(RC造)、梁を鉄骨造(S造)とする(図-1)大きなスパンを架け渡せるS造の特長と高い剛性が期待できるRC造の特長を併せ持ったハイブリッド構造です。すでに物流倉庫やショッピングセンターを中心に多くの実績があります。このミック構法において、さらなる工期短縮を目指して柱をプレキャスト化する構法が「ミックPCa構法」です。方法としては、図2に示すように、1.柱梁接合部まで含めてPCa工場で製作する「フルPCa型」、2.梁下まで工場で製作し柱梁接合部は場所打ちとする「梁下PCa型」、3.柱梁接合部と梁下の柱部位とを別個にプレキャスト化する「柱梁接合部分割PCa型」の3種類に分けられます。1.の「フルPCa型」ではプレキャスト部材の寸法・重量が増大し運搬や揚重のコストが高くなること、また2.の「梁下PCa型」では柱梁接合部のコンクリートが場所打ちのため工期短縮の効果が薄れるなどの問題点があり、その弱点を克服すべく、2007年に東京都品川区の物流倉庫建設工事において、3.の「柱梁接合部分割PCa型」を採用することにより、コストを抑えつつ1フロアー4日サイクルにて工期短縮を実現し、合理的なプレキャスト構法を確立しました。このたびは「ミックPCa構法」の1フロアー4日による施工をさらに進化させ、躯体構築における1フロアー3日による施工を実施し、ミックPCa構法採用での最短工期の達成・コストメリットの効果を実証しました。

ミック構法仕口部の構成
図-1 ミック構法仕口部の構成

ミックPCa構法のバリエーション
図-2 ミックPCa構法のバリエーション

■本構法(柱梁接合部分割PCa型:1フロアー3日サイクル)の特長

  • 1フロアー4日サイクルを3日にすることにより、工期及び上部躯体の施工コスト(使用重機期間・仮設関連等)が2割程度削減できます。

  • コンクリート部分は環境負荷低減を考慮したオールプレキャストであり、高い品質が確保されます。

  • 柱梁接合部と梁下の柱部位とを2分割のプレキャストとすることで、フルPCa型の場合に生じる運搬上の問題(梁鉄骨ブラケットが4方向に出る)、重量加算によるクレーンの大型化などの問題が解消されます。

■ 3日サイクルの施工手順

作業手順として、1日目に柱PCa建方(グラウトは後施工)~柱梁接合部(仕口部)鉄骨PCa+梁鉄骨(地組)建方、2日目に梁鉄骨HTB本締め~柱脚部・柱梁接合部(仕口部)グラウト注入(PCa部材接合部のグラウト注入)、3日目に仮設(柱頭先行足場)撤去~デッキ敷込みとし、4日目は1日目に戻り、デッキ上より上階柱PCa建方へ移行の手順により計画。揚重機2台による1日当たりの作業内容・作業量を調整し作業範囲(エリア)を決定及び、作業工数(工種別作業)を調整することにより、3日サイクルが成立します。以下に作業手順図を示します。

ミックPCa構法のバリエーション
■文書保管専用倉庫への適用例

「ミックPCa構法(柱梁接合部分割PCa型:1フロアー3日サイクル)」を、千葉県八街市に計画された文書保管専用倉庫((株)テイソウ千葉営業所八街2号倉庫)に適用しました。本工事の概要を以下に示します。

【工事概要】

工事名称 : (株)テイソウ千葉営業所八街2号倉庫新築工事
発注者 : (株)テイソウ
建設場所 : 千葉県八街市八街に46-6
設計施工 : 三井住友建設(株)
工 期 : 2008/10/11~2009/9/30 (本工事着工11/15:実質工期10.5ヶ月)
*「ミックPCa構法」による上部躯体施工工期 :2009/3/10~5/16(実働46日)
敷地面積 : 8,777.93m²
建築面積 : 3,151.31m²
延床面積 : 12,186.00m²
建物規模 : 地上 4階 用 途 : 文書保管専用倉庫

1. 工期の設定

全体工期10.5ヶ月という条件における各種工事の工期設定については、諸条件を考慮すると上部躯体を2.5ヶ月(暦日)以内で実施(床コンクリートは後打設)することが必定となります。柱躯体のPCa化実施も必定になり、2.5ヶ月の工期の場合での実稼働日(作業実施日)は、休日・天候などによる作業不能日を考慮すると、50日になります。全体の施工ボリュームと工区分割、サイクル工程、仮設などを含め施工計画シミュレーションを行った結果、建物全体を3工区分割とし、揚重機2台により計画、各工区のフロアー当たりの基本施工日数を3日と設定しました。すなわち、基準階3日サイクル/フロアー×4層=12+3(次工区への段取り等)による実稼働日15日、1工区当たり3週間(暦日)の躯体構築システムとしました。施工状況を写真-1~6に示します。

2.限られた敷地条件による「建逃げ方式」の採用

ミック構法の躯体構築法には、図-4に示すように「積上げ方式:柱現場打設」と「建逃げ方式:柱PCa化」があります。ミックPCa構法の場合は鉄骨建方同様、一般的に「建逃げ方式」の適用となります。建物の周辺に重機の走行スペースが取れる場合は、建物外部よりの建方が合理的(経済性・施工性の面において)ですが、本件の場合、既存倉庫営業敷地内での新築倉庫の工事であり、車両搬出入路で使用できる前面道路側以外の3方向については、建物が敷地境界にほぼ接している(足場のスペースのみ確保)敷地条件により、揚重機を構築建物の内部を走行させ、建逃げを行う計画としました。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

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