ミック構法(三井住友建設式柱RC梁S接合構法)を社内標準化(財)日本建築総合試験所の建築技術性能証明を取得
―耐震部材に圧縮型RCブレースが適用可能に―
■概 要
三井住友建設株式会社(東京都新宿区西新宿7-5-25 社長 五十嵐 久也)は、1999年以降、物流倉庫やショッピングセンターなどを中心にミック構法※1(三井住友建設式柱RC梁S接合構法)を適用し、多くの実績を重ねてまいりました。大スパン化が容易な鉄骨(S)を梁に用い、剛性の高い鉄筋コンクリート(RC)を柱に用いるという、混合構造のミック構法は、高品質・短工期・低コストの構法としてお客様から高い評価を得ています。
このたび、ミック構法の設計施工技術を社内標準化し、2009年11月10日、財団法人日本建築総合試験所(理事長 辻 文三)の建築技術性能認証委員会(委員長 松井千秋 九州大学名誉教授)において建築技術性能証明を取得しました。ミック構法の耐震部材として、従来からのRC耐震壁、鉄骨ブレースに加え、新たに圧縮抵抗型RCブレース(以下、スタックブレース※2)を適用可能にしています。
今般取得した性能証明では、ミック構法の柱RC梁S接合部は、長期荷重時に使用上支障となる損傷、ならびに短期荷重時に修復性を損なう損傷を起こさず、終局強度時の性能を満足することが認証されています。
※1 ミック構法(Mitsui-sumitomo Integrated Composite System)
※2 スタックブレース(Strong Aseismic Compressive R/C Brace)
■背 景
建物の構造は、使用性・安全性などの基本性能はもとより、用途に応じて求められる種々の顧客ニーズを満足させるように決定されますが、顧客ニーズのうちコスト、工期は経済情勢に大きく影響されるため、その時々の最適化をねらってRC構造、S構造あるいは両者の特徴を生かした混合構造などの構造種別が採用されています。このため当社では、事業主の多様なニーズにお応えするために、構造躯体の構築方法に関する技術開発を積極的に進め、メニューの充実を図っています。
柱RC梁S混合構造は、鉄骨量がS造より少ないためにS造よりコストを抑えることができます。また、柱RC梁S混合構造は、RC造と同様に一層ごとに施工を進める積層工法ですが、S造と同様に支保工が不要であり、RC造に比べて工期短縮が可能となります。この工期面での特徴を最大限に生かすためには、柱・梁のみで構造躯体を構成する純ラーメン構造を採用することが一般的です。しかしその反面、純ラーメン構造は、大スパンになるほど梁部材は圧延鋼材(ロール材)※3の仕様を超える高い断面性能が必要となり、コストが割高になるという問題があります。
これを解決するためには、スピーディな躯体施工を阻害することなく、かつ取付けが容易な耐震部材をラーメン架構に適宜配置し、梁断面のスリム化を図ることが必要となります。このような合理的な設計により、鉄骨量および鉄骨加工量は減少し、さらなる省資源化と経済性を達成させることができます。
以上の観点から、当社はミック構法に最適な耐震部材としてブレース材に着目し、SブレースおよびRCブレース(スタックブレース)を適用可能とし、ミック構法の設計施工技術の社内標準化を行いました。
※3 圧延鋼材:H形鋼などのJIS規格の熱間圧延鋼材。一般にロール材とも言う。
■ミック構法とは
ミック構法は、曲げに強い鉄骨を梁に用い、圧縮に強い鉄筋コンクリートを柱に用いる柱RC梁S混合構造です。ミック構法の柱梁接合部には、以下の3タイプがあります(図1参照)。
【タイプA】 柱梁接合部周りを鋼板(以下、ふさぎ板)で補強するタイプ
【タイプB】 柱梁接合部をせん断補強筋で補強するタイプ
【タイプC】 タイプA、タイプBの併用タイプ
タイプAは、柱梁接合部をふさぎ板で覆うため接合部強度が高く、またふさぎ板が型枠代わりになるため、施工が簡便であるという特長があります。建物外周にタイプAを用いる場合には、(鋼製のふさぎ板を外壁面にできないので)外壁はふさぎ板の外側に設けます。
タイプBは、柱梁接合部強度はタイプAよりやや低くなりますが、(ふさぎ板がなく、柱面がコンクリートなので)柱形を外壁面に出すことが可能です。
併用タイプのタイプCは、外周架構に用いるタイプであり、柱のコンクリート面を屋外側に、ふさぎ板面を屋内側にすることが可能です。
ミック構法は、純ラーメン構造とするほか、RC耐震壁、Sブレース、スタックブレース(圧縮抵抗型RCブレース)の耐震要素を併用することができます。
■スタックブレースとは
スタックブレースは、ミック構法の耐震部材として用いる、RC造のブレースです(図2、図3 参照)。スタックブレースは、圧縮力のみに抵抗することを特徴とし、引張力に抵抗する必要のないことから、ブレース端部にモルタルを充填するという、簡便な方法で架構と接合できます。三井住友建設は、2005年から2007年にかけて、スタックブレース工法に関するさまざまな性能実験を行い、施工性や構造性能を検証してきました。(特許出願中)
■ミック構法の特長
ミック構法は、以下のような特長を有しています。
- 曲げやせん断に強いS造と、圧縮力に強く、高い剛性を有するRC造を適材適所に用いることで、短工期と低コストを実現します。
- 一層分の柱のプレキャスト化や柱梁接合部のみのプレキャスト化により、さらなる工期短縮を可能とします。
- 耐震部材として、RC耐震壁、Sブレース、スタックブレースを適用することが可能であり、用途に応じて最適な躯体構造を提案します。
■今後の展開
三井住友建設では、このたびの設計施工技術社内標準化と、公的機関の技術性能証明取得により、ミック構法を高品質・短工期・低コストを実現する構造方式のひとつとして位置付け、物流倉庫やショッピングセンター等へ適用すべくさらに積極的な提案をしてまいります。
また、ますます高度化、多様化していく事業主のニーズにお応えできるよう、さらなる技術開発を進め、高品質・短工期・低コストを追求していく所存です。
<お問い合わせ先>
リリースに記載している情報は発表時のものです。
■説明図・写真
(A) ふさぎ板タイプ |
(B) せん断補強筋タイプ |
(C) 併用タイプ |
図1 ミック構法の柱梁接合部の3タイプ
図2 スタックブレースを用いたミック構法の概要図
(1) スタックブレース取付 |
(2)接合部の仕様 |
図3 スタックブレースの概要
写真1 ミック構法の施工状況(S梁の設置状況) |
写真2 ミック構法の施工状況2(鉄骨ブレース施工状況) |
写真3 ミック構法の施工状況(床スラブ施工後の状況) |