環境共創型業務施設「E-Comfort(イー・コンフォート)オフィス」を展開

― RCOffice/ver.2の開発 ―

■概 要

三井住友建設株式会社(東京都新宿区西新宿7-5-25 社長 五十嵐 久也)は、環境共創型業務施設「E-Comfort オフィス(イー・コンフォート・オフィス)」を展開し、環境配慮の提案をこれまで以上に強化してまいります。これは、先に公表した当社の環境経営理念から導かれた「環境共創プラットフォームE-Comfort Platform」1) の概念を業務施設分野に展開するものです。

E-Comfort オフィスの具体的展開のひとつとして、このたび「RCOffice/ver.2(アールシー・オフィス・バージョン2)」を開発しました。これは、かねてより取り組んでいる「ハイブリットRCオフィス」2)の新たな展開で、環境に配慮しかつ機能性・居住性に優れた高品質のオフィスビルを提供するものです。RCOffice/ver.2では、主に以下の3つの課題を解決することで新しいオフィス空間を創出しています。

  • 「執務空間での差別化」  
    • デットスペース(ムダ)の排除を追求し、より大きな無柱空間を確保
    • 実質供給面積のアップとローコスト化を同時に実現(柱躯体面の外壁併用など)
  • 「既存建物にはない新しいオフィス外装デザイン」  
    • デザイン性の高いコンクリートを活用した新しい外装デザインとローコスト化を同時に実現
  • 「プラスからマイナスへ、ムダをなくしてCO2削減」  
    • 環境負荷低減のための新しい機器導入による 「+」(プラス)ではなく、自然エネルギーの有効活用を通じた「-」(マイナス)の発想・・・室内が暑く感じられるが外は穏やかな陽気である、そんな時期は、積極的に外気を取り入れムダな空調を止める、穏やかな太陽光を取り入れることでムダな照明を排除するなど、無駄をなくすことでのCO2削減

今後、当社では環境対策に対する顧客ニーズに応えるべく、RCOffice/ver.2の技術提案・営業展開を積極的に図ることとしています。

1) 「E-Comfort Platform(イー・コンフォート・プラットフォーム)」とは、Environment(環境)、Ecology(エコロジー)、Earth(地球)の"E"と、Comfort(快適・楽しみ・安心)を組み合わせたもので、"環境配慮"と"生活の豊かさ"の両立をコンセプトとする当社の環境商品の根幹(プラットフォーム)をなす概念。その実現の仕組みとしては、高い耐久性を備えてE-Comfortのコンセプトを支える基盤「サステナブル・プラットフォーム」、交換容易性に優れた環境要素技術ユニット「エコ・モジュール」、建物利用者の環境意識の向上とエコ・モジュールの適切な更新を促す仕組み「暮らしとの共創」の3要素から構成されている。

2) 三井住友建設の得意技術であるRC造超高層住宅技術、免震・制震技術およびプレストレストコンクリート(PC)技術を融合し、RC造にS造・SRC造などを適切に取り入れた耐震性の高いハイブリット構造とするとともに、機能性・居住性に優れた事務室空間を確保するオフィスビル。

■三井住友建設の環境共創型業務施設「E-Comfort オフィス」への取り組み

近年、業務施設は省エネルギーへの技術導入が積極的になされているものの建物規模の大型化が進んでおり、エネルギー消費増大化の傾向が顕著になっています。一方、クールビズ、ウォームビズの普及に見られるように、オフィスビルでの環境対策に対する建物利用者の意識もここ数年確実に高まってきています。

このような状況の中で、三井住友建設は地球環境の保護と建物利用者の健康な生活をサポートする環境配慮型の業務施設づくりに積極的に取り組んでいます。これまで、「自然エネルギーの活用技術」、「環境社会への対応技術」、「省エネルギー・省資源への対応技術」、「エネルギー負荷の低減技術」などに関する多種多様な提案と実績を積んでまいりました。現在、当社の設計施工で東京都中央区に建設中のオフィスビルについても、環境配慮型のモデルタイプとして様々な試みを導入しており、CASBEEにおいて最高評価Sランクの認証を取得する予定です。

当社はこれらのノウハウと実績を活かし、新たな環境配慮の考え方を導入した環境共創型業務施設「E-Comfort オフィス」を展開し、環境対策への提案活動を推し進めてまいります。「E-Comfort オフィス」とは、「環境配慮」と「生活の豊かさ」の両立をコンセプトとし、竣工時のみならず将来にわたって高い環境性能を維持し続けるオフィスビルです。

■RCOffice/ver.2の開発

三井住友建設では、環境共創型業務施設「E-Comfort オフィス」の具体的展開のひとつとして、「RCOffice/ver.2」(以下、RCO-v2と表記)を開発しました。これは、かねてより当社で取り組んでいる「ハイブリッドRCオフィス」の新たな商品として開発した、環境配慮と機能性・居住性を高めた高品質のオフィスビルです。RCO-v2の開発は、企画およびデザインにおいて、芦原太郎建築事務所(東京都千代田区富士見1-7-12)の協力を得て進めました。

RCO-v2の開発にあたっては、E-Comfortのコンセプトである「環境配慮」と「生活の豊かさ」の両立を念頭に置くとともに、RC造の持つよさ・メリットに着目して以下のような取り組みを行っています。

【1】ムダを排除してより大きな無柱空間の確保

通常のS造のオフィスビルでは、大きな無柱空間は確保できるものの、窓際では室内に柱が立ち並ぶことで非効率的(ムダ)な空間が生み出されるのが一般的です。RCO-v2では窓際の空間を含めたより大きな無柱空間を容易に確保するとともに、環境に配慮した機能性・居住性の高いオフィス空間を経済的に実現しました。

窓際の空間を無柱空間とするには柱をすべて外部に追い出せば可能になりますが、S柱の場合は外壁が複雑化してコストアップの要因となります。そこで、RCO-v2では「ハイブリットRCオフィス」のための新たな構工法である「HBW (Hybrid Bearing Wall(ハイブリッド・ベアリング・ウォール) )構法」を開発し、窓際の空間を含めたより大きな空間を経済的に確保することを可能にしました。すなわち、窓際の柱の断面を偏平にして外部に追い出す量を少なくするとともに、柱・梁をRC造とすることで躯体をそのまま外壁に兼用して経済性の向上を図るものです。

【2】既存建物にはなかった新しい外装デザインの提供

RCO-v2では外周構面をRC架構としているので、外装についてはコンクリート躯体をそのまま利用することで経済性を高めるとともに、新しいデザインの提供を可能にしています。

従来、コンクリート面の仕上げは、タイルや石などをコンクリート面に貼り付けて外装仕上げとするのが一般的でした。これに対して、近年、緻密な模様をコンクリート表面へ転写する技術や意匠性の高い骨材を露出させた構造体への使用が可能なカラーコンクリートなどのデザイン性の高い「テクニカルコンクリート」を得る技術が実用化されています。RCO-v2においても、このようなコンクリートを用いることで、これまでのオフィスにはなかった新しい外装デザインを提供することとしています。

【3】環境配慮への取り組みでCO2削減

RCO-v2では、その特長を活かしてより環境に配慮した計画を行い、CO2削減を2つの側面から実現しています。

a) ムダを省いてCO2削減:「プラスからマイナスへの発想」

環境配慮への取り組みは、環境負荷低減のための新しい機器を導入するなど「+」(プラス)の指向が一般的ですが、RCO-v2では自然エネルギーの有効活用による「-」(マイナス)の考え方でCO2削減を目指します。

すなわち、外周構面の偏平柱に沿って縦型換気スリットを設置することで、一般的な窓下水平スリットと比較して数倍の自然換気(外気)量を得ることができます。また、コア部に外部吹き抜け空間 (ボイド)を設置しているので、自然換気の効率が増すとともに自然光の採り入れが可能です。その結果、室内が暑く感じられるが外は穏やかな陽気の時期は、積極的に外気を取り入れてムダな空調を止めることができ、穏やかな太陽光を取り入れることでムダな照明を排除することができます。このように、自然換気(外気)や自然光を有効に活用することで、ムダなエネルギー消費を抑えてCO2削減を可能にしています。

b) 自然エネルギーの積極的活用など新しい環境技術の導入:「環境配慮の見える化」

RCO-v2では、屋上緑化や太陽光発電パネルなどの環境要素技術を取り込みます。例えば、屋上や外壁面への太陽光発電パネルユニットの設置や、開口部のガラス面への透過型太陽光発電パネルの採用などです。これらは、時代と共に変化する環境性能への要求に応えるために定期的な更新(新陳代謝)が容易に行えるように配慮します。

また、コンクリート製の躯体は気密性が高くかつ躯体の熱容量が大きい(鉄骨製の躯体の2倍)ので、その有効利用も図っています。すなわち、「床吹出空調」や「パーソナル空調」に加えて「躯体蓄熱」の利用、外壁比率の高いファサードへのペアガラスの採用などで優れた温熱環境を得ています。

さらに、RCO-v2では建物利用者の環境意識の向上を図るとともに、暮らしと技術の調和を支援することにも心掛けており、LED照明の導入、屋上緑化の積極的設置などに取り組みます。このように、自然エネルギーの有効活用やコンクリート製躯体の特長を活かした取り組みなどで「環境配慮の見える化」を図っています。

【4】無柱空間を確保する新構工法の開発:HBW構法と大スパン対応PCaPC梁

HBW構法とは、前述のようにより大きな無柱空間を確保できるRCO-v2実現のために開発したもので、建物の外周構面については3.2~3.6m間隔に設けたRC偏平柱によるBearing Wall(ベアリング ウォール)構造 3) とし、建物共用部 (コア部)についてはSブレースを組み込んだCFT架構(鋼管コンクリート構造)としたハイブリッド構造です。コア部のCFT架構に耐震性能のほとんどを持たせることにより、外周構面はRC偏平柱とRC梁による軽快なラーメン架構とすることができました。

外周構面とコア部の間の無柱空間は、大梁「ホールガーダー」4) と小梁「ホールビーム」5) を併用することで実現しています。これらの梁はプレストレスを導入したプレキャストコンクリート部材(PCaPC)とすることで大スパンに対応するとともに、S造並みの工期短縮を可能にしています。また、これらの梁にはRC造でありながら多数の大開口を設けることが可能であり、オフィスビルに必要な天井内の設備配管をS造オフィスと同様に自由に計画することができます。

また、小梁は偏平柱ごとに架け渡されており、オフィスの床荷重は小梁を通じて偏平柱に直接伝達されるので外周構面のRC大梁は一層おきに省くことも可能であり、建物のファサードにデザイン性を与えています。

3) 柱を比較的短い間隔で並べて鳥かごのような架構とする架構形式

4) 設備配管用の貫通孔(450mmΦ)を連続的に設けたPCaPC大梁

5) 床下に設備配管ルートを自在に確保するために大開口を設けたPCaPC小梁

【5】優れた居住性・機能性の確保

RC造系のRCO-v2は、「風」や「歩行」による建物の揺れの面でS造オフィスに比べて優位性を持っています。したがって、特に揺れに対する居住性を必要とする住宅系用途の「事務所+付置住宅」、「事務所+ホテル」などの複合用途施設にも適しています。

また、RCO-v2では、耐火被覆の不要なPCaPC梁を用い、さらに床下に空調設備を配することで、天井が高く開放感のあるオフィス空間が実現できます。さらに、上下二方向照明を用いたデザイン天井の採用や、単調なオフィス空間に視覚的演出を付与するコア部のボイドの設置などで空間性・機能性に富んだオフィス環境を演出しています。

■今後の展開について

現在、東京都では延べ面積10,000㎡以上のオフィスを新築する際に建物環境計画書の提出を義務付けています。しかしながら10,000㎡以上の新規着工件数は2,000㎡以上の件数のうちわずか15% 6) となっています。「E-Comfort オフィス」のコンセプトを導入したRCOffice/ver.2は全ての規模の業務施設に展開可能ですが、三井住友建設は小規模である2,000㎡以上のオフィスビルを中心に提案を進めることにより、環境配慮に貢献していく所存です。

6) 2005年版建築統計年報(東京都都市整備局)による

 

<お問い合わせ先>
〒160-0023
東京都新宿区西新宿7丁目5番25号
三井住友建設株式会社
広報室 宇野 嘉壽之
TEL 03-5332-7230 FAX 03-3365-7221
e-mail : information@smcon.co.jp

RCOffice/ver.2の外観パース(地上14階建)
RCOffice/ver.2の外観パース(地上14階建)
RCOffice/ver.2の平面形状
RCOffice/ver.2の平面形状

(建物外周はRC造の偏平柱と梁による架構、コア部はSブレースを組込んだCFT架構。その間は「ホールビーム」と「ホールガーダー」を架け渡した無柱空間。偏平柱に沿って設けた縦型換気スリットおよびコア部のボイドからは外気(矢印はその流れを示す)が、コア部のボイドからは自然光を取り入れることができる。)

窓際のデッドスペース(ムダ)の排除
窓際のデッドスペース(ムダ)の排除
RCOffice/ver.2の環境への取り組み
RCOffice/ver.2の環境への取り組み

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

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