モールグラウト工法で3kmの超長距離圧送性能を実証
三井住友建設株式会社(東京都中央区佃2-1-6 社長 五十嵐 久也)は、超長距離圧送により短時間で覆工背面空洞を充填できる"モールグラウト(MOLE-Grout)工法"について、可塑性充填材を我が国ではじめて超長距離(3km)かつ大容量(18m³/時)で圧送するという実証試験を3月10日に公開実施し、超長距離・大容量圧送性能を安定的に発揮できることを確認しました。
モールグラウト工法は、超長距離圧送による覆工背面空洞充填工法で、坑外から充填材を長距離圧送することで、高効率に覆工背面の空洞を充填することができ、小断面水路トンネルの覆工背面などの空洞充填に最適な工法です。
このたびの3km圧送試験により、モールグラウト工法の確かな施工性があらためて実証され、本工法の適用拡大が加速されるものと期待されます。
■背景
高度経済成長期には、発電所水路トンネルや工業用水路トンネルが多数建設されましたが、供用開始後40~50年を経て老朽化しつつあり、維持・補修対策が必要とされています。
この維持補修では、トンネル覆工背面の空洞を確実に充填することが重要とされています。
ところが、水路トンネルのほとんどは断面積が10m²未満の小断面トンネルで、坑内に施工のための設備を持ち込むことができないため、この覆工背面への充填作業は坑外から行わざるを得ないにもかかわらず、従来の圧送工法では最大でも可塑性充填材を2km程度しか圧送することができず、また充填量も3m³/時未満と小容量であるため、一般的に補修作業が可能な通水停止期間が短い水路トンネルでは、大規模な補修が困難でした。
このため、3km程度の超長距離圧送性能と15m³/時 程度の大容量圧送性能を兼ね備えた可塑性充填材の充填工法が求められていました。
モールグラウト工法は、この二つの性能を満たすように開発した充填工法で、これまで施工実績を重ね、施工性の確認を行ってきましたが、このたび当社能登川工場内において公開で実証試験を実施することで、我が国ではじめて設計最大能力の3kmの超長距離圧送性能と18m3/時の大容量圧送性能を安定的に発揮できることを実証しました。
■モールグラウト(MOLE-Grout)工法
モールグラウト工法は、超長距離圧送による覆工背面空洞充填工法で、坑外のプラントから延長3km程度の超長距離圧送が可能で、高効率に覆工背面の空洞を充填することができます。
水中分離抵抗性の高い可塑性充填材を用いており、湧水箇所でも問題なく施工可能です。また、可塑状態を長く保持できるため、トンネル覆工背面の隅々まで浸透し、優れた空洞充填性・施工性を発揮します。
本工法では2液混合型の可塑性材料を用い、セメント系特殊固化材(A材)と助材(B材)を別々に圧送し、注入地点でリミキシングを行った後、所定の圧力で注入を行う方法を採用しています。
モールグラウト工法は、従来の空洞充填工法に比べて、超長距離の圧送が可能なことに加え、18m³/時の大容量圧送が可能であり、経済的な施工ができます。
■実証実験
実証試験は、当社能登川工場内に実工事と同等の混練りプラント、圧送配管網、吐出機構を設置し、実際の工事を上回る条件を設定して実施することとしました。
配管は、同工場外周を2周半する3,006mの配管としたうえで、90°を含む12箇所の急曲部を設けており、実際の現場条件よりもはるかに厳しい条件設定となっています。
今回の試験では、この配管設備を用いて、可塑性充填材を我が国ではじめて超長距離(3,000m)かつ大容量(18m³/時)で圧送しました。
その結果、3,000mの超長距離を安定して一定流量で圧送できることを確認するとともに、管内圧力、流量などの計測を実施して、機器・配管設計の妥当性も検証できたことから、3,000mをこえる超長距離圧送にも一定の目途をつけることができました。
さらに、吐出口から採取した充填材の品質確認試験を行い、水中不分離性能など覆工背面空洞充填材としての要求性能を高いレベルで満たしていることを確認しました。
■今後の展望
モールグラウト工法は、厳しい施工条件下でも適用可能な超長距離圧送、材料の大量圧送を実現する工法で、モールボルティング(MOLE-Bolting)工法、モールアラミドシート(MOLE-Aramid Sheet)修復工法と組み合わせて、"小断面トンネル リニューアルシステム工法"を構成するものです。小断面トンネル リニューアルシステム工法は、施工可能期間に大きな制約のある小断面水路トンネルにおいても、短期間で恒久的なリニューアルを可能とするシステムです。
このたび、モールグラウト工法について12箇所もの急曲部を含む配管網での安定した圧送性能が実証できたことから、さらに長距離で広範な施工条件において、小断面水路トンネルの短期間で恒久的なリニューアルへ適用を図ることが可能になりました。
今後、さらなる効率化に向けて改良を図るとともに、当社の保有する各種トンネル調査技術を組み合わせ、BCP(事業継続計画:Business Continuity Plan)を見据えた小断面水路トンネルのライフサイクル・マネジメントの提案に取り組んでいく方針です。
<お問い合わせ先>
リリースに記載している情報は発表時のものです。
写真-1 公開試験の状況 |
写真-2 試験における混練りプラントと配管網の一部 |
写真-3 充填材の吐出状況(300リットル/分) |
写真-4 充填材の吐出状況(300リットル/分) |