三井住友建設の物流施設 "e-Logisty" を開発、提案を開始
― 市場価格の動向にフレキシブルに対応する最適構工法提案を実現 ―
三井住友建設株式会社(東京都中央区佃2-1-6 社長 則久 芳行)は、物流施設の市場価格の動向に柔軟に対応し、短工期・機能性・経済性等あらゆるニーズに対応した環境にやさしい三井住友建設の物流施設 "e-Logisty" を提案・提供してまいります。 弊社では、従来より物流施設の建設における高付加価値・工期短縮・経済性などの多様化した事業主のニーズに応えるべく、架構形式や施工方法の研究開発に取り組んで参りました。このたび、当社開発の「ミック構法(※1)」を基盤技術とし、「良いものを、早く、安く」を主眼に、事業主のニーズにフレキシブルに対応できる構工法 "e-Logisty" を確立、積極的に営業展開を行います。
■ 背景
近年、建設材料費の市場価格が大きく変動しており、鉄骨材高騰の影響の少ない構工法が注目されています。従来の大スパン構造の主流である鉄骨造に代わる構法として柱をRC造、梁をS造・梁をRC造(プレストレス導入)とするハイブリッド構造等が考えられます。物流施設・ショッピングセンターなど大規模な建物の需要において、当社の開発したミック構法は、幅広い用途に適用でき、短工期でコストメリットのある構法として「ミックPCa構法」を開発し、多くの実績を重ねてきました。しかし近年の物流施設等は、「工期短縮、機能性向上、ローコスト」等、事業主のニーズが多くなっている事から、本構法の汎用性拡大を主眼に、ミック構法のさらなる改善・改良を追求してまいりました。
(※1) ミック構法(Mitsui Sumitomo Integrated Composite System):柱が鉄筋コンクリート造(RC造)、梁が鉄骨造(S造)のハイブリッド(混合)構造
■ 三井住友建設の物流施設 "e-Logisty" とは
ミック構法を基幹に、既往の構工法技術を改善・改良、「より良いものを・より早く・より安く」をモットーに、事業主のニーズに応えるべく、「低コスト」・「短工期」・「機能性・保管効率向上」・「事業リスク低減」に対応したタイムリーな提案を実現します。その代表として、すでに発表した「ミックPCa構法(2009年7月)」・「スタックブレース(2008年6月)」を始め、さらに「ローコスト物流工法」・「ロングスパン物流工法」の開発が完了し、提案を開始しました。また、これらの技術は在来工法に比べて建設時のCO2排出量を削減することができ、地球環境に優しい物流施設として事業に貢献することができます(図-1)。
図-1 三井住友建設の物流施設
■ ニーズに応える「ミック構造」の改善・改良提案バリエーション
1.【低コスト】に応える床工法改善による「ローコスト物流工法」
物流倉庫のコストは、その半分(建設総コストの約50%:図-2)を構造躯体が占めています。その構造躯体コストを低減させることが、最も効率的・効果的なコストダウンになります。物流施設の構造躯体コストとは、「杭・基礎・柱・梁・床・外装(ALC等)」から構成されますが、構造体コスト低減の一例として「小梁」と「床」をセットで考え、「床ハイブリッド工法」としての構工法改善・改良によりコストダウンをはかり、「ローコスト物流工法」を提案しています。「ミック構法」の場合、小梁は通常H型鋼ですが、改善した床工法では、特殊架構を施し小梁としての重量を約60%低減させ、市販の床材と組合せた架構型式で構成することにより、構造躯体コストを約1割低減しています。
図-2 物流施設建設コストの構成 |
「床ハイブリッド工法」システム |
床ハイブリッド工法適用例
2.【機能性・保管効率向上】に応える「ロングスパン物流工法」
当社は、PC技術を導入したPC橋梁の実績においてトップクラスのシェアがあり、多くの技術的・施工ノウハウを有しています。この技術を応用し大空間を提供する構法として、梁(大梁)をPCaPC(プレキャスト プレストレストコンクリート)を取り入れた架構型式があります。スパン拡大により物流倉庫の大空間が実現し、時代の流れや事業の変化に合わせて使い方もフレキシブルに変えることができ、同じ面積でも機能的で保管効率に優れた倉庫を計画できます(図-3、4)。また、プレストレス技術を併用した合理的な梁を採用することにより、鉄骨等の材料価格変動に影響されにくい構造を提供し、事業リスクの低減に貢献します。状況に応じ、プレテンション方式、ポストテンション方式どちらの対応も可能です。
図-3 ロングスパン物流工法イメージ図
図-4 「奥行き」方向(14m×6スパン)プレストレス計画(例)
図-5 ロングスパン物流工法イメージ姿図
(※2) プレテンション方式 :
PC工法によるプレストレス導入方法の1つで、ポストテンション方式と対比される用語。
コンクリート打ち込み前にPC鋼材に引張力を与えておき、コンクリートの硬化後にコンクリートとPC鋼材との付着によってプレストレスを与える方法で、PC鋼材をコンクリート打ち込み前に緊張しておくのでプレテンションと呼ばれる。
(※3) ポストテンション方式 :
PC工法によるプレストレス導入方法の1つで、プレテンション方式と対比される用語。
コンクリートの打ち込み、硬化後(所定の強度確認後)にコンクリート部材に打ち込まれた配管(シース管)にPC鋼材を挿入し引張力を与え、これをコンクリートに定着させプレストレスを与える方法。
3.【短工期:工期短縮】に応える「ミックPCa構法」・「スタックブレース工法」
1) ミックPCa構法
「ミック構法」は柱(RC部位)を現場打設が基本ベースです(図-6)。「工期短縮」を重視した構工法として、「ミックPCa構法」があります。本工法は、柱をPCa化し構築する方法で、PCaの製作方法により図-7に示すように、1. 柱梁接合部まで含めてPCa工場で製作する「フルPCa型」、2. 梁下まで工場で製作し柱梁接合部は現場打ちとする「梁下PCa型」、3. 柱梁接合部と梁下の柱部位とを別個にプレキャスト化する「柱梁接合部分割PCa型」の3種類に分けられます。施工環境にもよりますが、柱現場打設工法に比較し、躯体工期の2~3割程度の工期短縮が可能となります。
図-6 ミック構法 柱梁接合部の構成
図-7 ミックPCa構法のバリエーション
2) スタックブレース工法
物流施設には免震装置(杭頭免震等)を取り入れることにより、「事業リスク低減」に対応した免震構造物流施設があります。スタックブレース(※2)工法とは、免震構造物流倉庫向けの耐震要素として、プレキャストのRCブレースを使用する工法です。このブレースは、圧縮力のみに抵抗することを特徴とし、引張力に抵抗する必要のないことから、ブレース端部の接合ディテールはモルタル充填のみであり、シンプルで効率的に施工できる工法です。従来の鉄骨ブレースと比べて、材料費が安いばかりでなく、ブレース端部のディテールがシンプルであるため、プレキャスト部材の製作や取付けが容易で施工性に優れています(図-8)。また、鉄骨ブレースと同様な運搬・揚重・建て方が可能となり、工期短縮に寄与します。
(※2) スタックブレース(STACブレース): STrong Aseismic Compressive reinforced concrete brace
図-8 スタックブレース工法の施工実験
■ 地球環境への負荷低減に寄与する構工法
前述記載の各提案(構工法)は、タイムリーなる事業主のニーズに対応すべく、さまざまな保有技術・システムの特徴を有効的に導入した構工法です。工期短縮・柱・梁のPCa化・建設資材(鋼材)の削減等により建設時のCO2削減に寄与すると共に、地球環境への負荷低減を考慮した構工法です。
■ 今後の展開
三井住友建設では、物流倉庫の架構形式としてミック構法を中心とし、柱PCa化(ミックPCa構法)等による高生産性構工法を適用した案件を含め、すでに多くの施工実績があります。今後も、多様化・高度化する事業主ニーズに応えるために、「求められる物流施設」の提供をテーマに、トータルマネージメントにより物流施設のベストパートナーになるべく、ミック構法やRC、PC架構の更なる改善・改良を含め、新たな技術開発の取組みを続け、高品質・高機能を追及し、提案・展開していく方針です。
<お問い合わせ先>
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