実用的な200N/mm2超高強度コンクリートを開発

―超高層住宅のさらなる高品質化を推進―

■概 要

三井住友建設株式会社(本社:東京都中央区佃2-1-6 社長 則久 芳行)は、住宅高品質高機能化委員会の活動の一環として、超高強度コンクリートの開発に取り組んできました。この度、鉄筋コンクリート造の超高層住宅に使用される超高強度コンクリートについて、すでに達成している200N/mm2の超高強度コンクリートに対して、安定した強度発現および流動性や自己収縮の問題を改善、これらをプレキャスト部材に適用する際に必要な品質管理手法を確立し、居住性・安全性・耐久性に優れた超高層住宅の実現に向けにさらに前進いたしました。

■背 景

当社では、平成20年度より住宅高品質高機能化委員会を立ち上げ、得意分野である集合住宅の高品質化および高機能化を目指して、全社一丸となって取り組んできました。その一環として、数多くの実績を誇る鉄筋コンクリート造の超高層住宅の居住性・安全性・耐久性のさらなる向上を目的として、超高強度コンクリートの開発に注力してきました。その結果、200 N/mm2を超える超高強度のコンクリートを開発、2008年9月に対外発表いたしました。

当社は現在までに、設計基準強度で150N/mm2までの高強度コンクリートについて国土交通大臣認定を取得しており、設計基準強度で120N/mm2の高強度コンクリートを52階建ての超高層住宅に適用した実績があります。また、プレキャスト工法への展開については、部材の製造工場で (社)プレハブ建築協会の「PC部材認定(H認定)*1」を取得しています。

■超高強度コンクリートとは

一般的に、高強度のコンクリートを使用するほど、柱本数の減少や部材のスリム化による居住性向上、部材の高強度化による安全性の向上、緻密な構造による耐久性の向上を図ることができます。従って、国土交通大臣認定を取得している150N/mm2コンクリートの強度を大きく上回る超高強度のコンクリートを用いることにより、超高層住宅の居住性・安全性・耐久性をさらに向上することができます。

超高強度コンクリートでは、高い強度を発現させるため、通常のコンクリートの約2~4倍の結合材*2を使用しますが、結合材は粉体であるため、その量を多くするとコンクリートの流動性が低下します。さらに、コンクリートが硬化する際に結合材が化学反応して縮む現象(自己収縮*3)によって、コンクリートにひび割れが発生する場合もあります。すなわち、超高強度というメリットがある反面、流動性や自己収縮の問題を克服しなければ実用に供することはできません。

■当社の超高強度コンクリートの特徴

すでに達成している200N/mm2の超高強度コンクリートに対して、流動性の確保や自己収縮の抑制を達成した上で、安定した強度発現を得ることに成功しました。試験用に作成するテストピースではなく、実際の柱部材のコンクリートから切り出した試験体(コア試験体)による圧縮強度で、200N/mm2以上の強度を安定して確保しています。これにより設計基準強度で200 N/mm2を達成しました。
材料的には、結合材の一つとしてジルコニア起源シリカフューム*4)を、細骨材としてフェロニッケルスラグ*5を使用していることが特徴で、このことにより以下のメリットがあります。

  • ジルコニア起源シリカフュームを用いることにより粘性を抑え、結合材を多くしても高い流動性が得られることに成功。鉄筋が多い部材でもコンクリートが確実に充填され、高品質な部材の製造が可能です。
  • 細骨材に用いるフェロニッケルスラグ*5砕砂は、安定した原材料の入手が可能です。また産業副産物であるため、環境負荷を低減できます。

また、プレキャスト部材の製造では、温度と湿度をコントロールした品質管理が特徴で、このことにより以下のようなメリットがあります。

  • 部材製造の際の温度・湿度をコントロールするため、季節要因などに左右されず安定して200 N/mm2以上の高強度を実現しています。
  • 結合材の選定、および温湿度コントロール養生により、自己収縮によるひび割れを防ぎます。
  • 養生に必要な温度・湿度のコントロールは、プレキャスト工場の既存の設備(蒸気養生装置)で可能です。

■今後の展開

当社は、関連会社としてプレキャストコンクリート製造会社*6を有しています。また、独自のプレキャスト工法を開発*7し、数多くの超高層住宅へ適用してまいりました。今回開発した超高強度コンクリートは、当社の得意分野である超高層住宅において、プレキャスト部材として幅広く適用することが期待されます。

今後は、プレキャスト工場での製造性・経済性を追求し、プレキャスト部材としての供給体制を整えることで、より高品質で高い居住性と耐久性を併せ持つ超高層住宅の提供をさらに促進していきます。

■開発体制

本開発は、東京大学大学院工学系研究科 野口准教授、および住友大阪セメント株式会社との共同研究開発により進めています。プレキャスト部材製造に関しては、三井プレコン株式会社、SMCコンクリート株式会社の協力を得ています。

[補足説明]

*1 :(社)プレハブ建築協会におけるPC(プレキャストの意味)部材品質認定制度に基づく認定で、設計基準強度で60N/mm2以下を対象とした「N認定」、および60N/mm2を超え120N/mm2以下を対象とした「H認定」があります。

*2 :水と反応し、コンクリートの強度発現に寄与する物質を生成するものの総称
(セメント、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフュームなど)

*3 :コンクリートは、セメントと水が反応(水和反応)することで時間と共に強度が高くなりますが、このとき同時に体積が縮みます。この体積が収縮する現象を、自己収縮といいます。自己収縮が鉄筋などにより拘束されると、コンクリートには引張り力が作用し、ひび割れが発生します。一般に、自己収縮は高強度コンクリートほど大きくなることが知られています。
(JIS A 0203での用語)
「セメントの水和の進行によって、コンクリート、モルタル及びセメントペーストの体積が減少し、収縮する現象」

*4 :ジルコニア(二酸化ジルコニウム:ZrO2)を製造する過程で生産されるシリカフューム。フェロシリコン製造時に発生する一般的なシリカフュームの平均粒径0.1~0.2μm程度と比較して、1μm程度と大きい。そのため、コンクリートに添加すると、粘性が過大にならず流動性高くなります。

*5 :フェロニッケルスラグは、ニッケル鉱石からステンレスの原料となるフェロニッケルを製錬する際に発生する副産物です。溶融状態のスラグを冷却し砕いて細かくすることで得られる人工砂製品です。通常の骨材に代えて、細骨材にフェロニッケルスラグ細骨材を使用することで、優れたワーカビリティと高強度化を達成できます。
(JIS A 0203での用語)
「炉でフェロニッケルと同時に生成する溶融スラグを除冷し、又は水、空気などによって急冷し、粒度調整した細骨材」(JIS A 0203)

*6 :三井プレコン株式会社、SMCコンクリート株式会社(連結決算対象)

*7 :柱、梁、およびその接合部をプレキャスト化したフルプレキャスト工法。(スクライム工法およびスクライム-H工法※)
(※スクライム工法およびスクライム-H工法は、LRV工法およびLRV-H工法(大林組)との工法統一を行い、両社共同にて特許を保有・出願)

写真-1 フレッシュコンクリート状況
写真-1 フレッシュコンクリート状況

写真-2 コア試験体
写真-2 コア試験体

写真-2 コア試験体

写真-3 ジルコニア起源シリカフューム

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

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