周辺温熱環境エンジニアリングツール「Cooling Together」を開発
― 温暖化対策の実効性を「数値化・見える化」―
三井住友建設株式会社(東京都中央区佃2-1-6 社長 則久芳行)は、温暖化対策や都市のヒートアイランド対策といった周辺環境の改善を求める声に応えるため、さまざまな角度から温暖化対策の実効性を判断するための周辺環境エンジニアリングツール「Cooling Together」*1を開発し、実用化しました。
「Cooling Together」は、[1]風環境シミュレーション、[2]熱環境シミュレーション、[3]総合的環境性能評価(CASBEE-HI)、ならびに[4]機能性建材*2データベースにより構成された周辺環境エンジニアリングツールです。これにより、今まで困難であった温暖化対策(周辺環境の改善)の効果について、「数値化・見える化」することが可能となりました。また、温暖化対策技術の社内データベースを用いて、効率的に対策技術を選択する事ができます。
この技術により温暖化対策の効果を視覚的に理解でき、実効性のある対策を講じることが可能となります。
三井住友建設は、集合住宅、生産施設をはじめとする建物の温暖化対策提案に「Cooling Together」を使用し、低炭素の都市・街づくりに貢献します。
■ 背景
地球温暖化をはじめ、人々の環境に対する関心はますます大きくなっています。日常の生活環境はもちろんのこと、最近では都市部のヒートアイランド現象をはじめ周辺環境の改善を求める声は日増しに強まっています。公共施設はもちろん商業施設や生産拠点、オフィス、さらには住宅まで、さまざまな建物で環境対策が求められています。
それに呼応するように、屋上緑化、保水性舗装、高反射塗料など、数多くの温暖化対策技術が開発されています。また風の流れ、いわゆる「風の道」を形成することによる温暖化対策など、周辺環境に配慮した建物計画も望まれています。しかし、これらのさまざまな温暖化対策を建物や配棟計画に取り入れたときの実効性、すなわち建物本体あるいは街区における実際の性能・効果は必ずしも明確ではありませんでした。対策技術を導入してもその費用対効果が曖昧で、対策技術への投資判断が難しいのが現状です。
三井住友建設では、これまで温暖化対策技術の実効性を明確にする技術開発に取り組んでまいりました。そして、この度新たに温暖化対策技術を「数値化・見える化」する周辺環境エンジニアリングツール「Cooling Together」を開発し実用化しました。
■ Cooling Together」の概要
開発した周辺温熱環境エンジニアリングツール「Cooling Together」は、外壁面(ファサード)・地盤面などの建築材料や建物の配棟計画による温暖化対策の効果を、コンピュータシミュレーションを駆使し様々な角度から「数値化・見える化」する技術です。具体的には、"熱環境シミュレーション"による建物・地盤面の表面温度ならびに建物熱負荷の予測、"風環境シミュレーション"による風の道の検討、"CASBEE-HI"による総合的かつ相対的な環境性能評価を行います。また、当社オリジナルの温暖化対策技術のほか、一般公開されている様々な温暖化対策技術を広範囲に集積した社内データベースを利用することにより、最適な対策技術を提案します。
「Cooling Together」は、強力で実効力のある温暖化対策、周辺環境の改善を実現する周辺環境エンジニアリングツールです。
■ 技術のメリット
「Cooling Together」を用いることにより、温暖化対策の効果を視覚的に理解することができます。また効果の「数値化」により、CO2削減量やエネルギー削減量による電気料金やガス料金などのランニングコストの削減量を、計画段階において「見える化」することができます。
環境負荷低減あるいはエネルギー削減を「見える化・数値化」することにより、マンションデベロッパーにとってはエンドユーザーに対する大きなアピールポイントになります。
また建物オーナーにとってはランニングコスト削減率を視覚的に確認できると共に、周辺環境に関する社会貢献を分かりやすく認識することができます。
■「Cooling Together」の各要素技術の概要
[1]風環境シミュレーション
計画建物あるいは街区全体によりつくり出される風の流れ、いわゆる風の道を視覚的に知ることができる技術です。建物CADデータや数値地図データを入力することにより、対象とする街区の風の流れを計算します。風環境シミュレーションにより、どのように風が流れているのか視覚的に把握することができます。この結果を用いることにより、空気の停滞による熱だまりを事前に防止する措置を講じることができます。すなわち、より実効性のある周辺温熱環境の改善提案を行うことができます。なお、この技術は当社のこれまでの実験データに基づいて自社開発した気流計算方法を採用しています。
超高層住宅周辺の風の流れのようす(流線分布*)*流線分布
流線は、風がどのように流れて何処に到達するかを表したもの(流れの軌跡)です。また線の色は速度を表し、青色は速度がおそく、黄色から赤色になるに従い速くなります。
この流線の向きと色により、街区を流れる風のようす、すなわち風が建物間のどの部分を通り抜け、どの部分で速度が増加、あるいは減少するのかが分かります。[2]熱環境シミュレーション
日射や気温による建物外壁面や地表面の温度を視覚的に知ることができる技術です。建物CADデータ、材料物性データ、そして日射量や風速などの気象データを入力することにより、特定の日時あるいは一年を通じての建物外表面や地表面の温度を予測することができます。この技術により屋上緑化、高反射塗料、保水性舗装などのヒートアイランド対策技術を実際の建物に用いた場合の温度低減効果を把握することができます。また、建物熱負荷の低減量も算出可能で、その結果からCO2削減量、エネルギー削減量を計算する事ができます。
対策前後の工場の屋根面の温度(8月) | 対策前後の工場のCO2排出量計算例 |
[3]客観的・相対的環境性能評価
提案した温暖化対策、周辺環境対策技術を一般的な建築環境総合性能評価システムであるCASBEE-HI(ヒートアイランド)やCASBEE-新築を用いて評価することにより、当社独自の提案を客観的、相対的に評価することも可能です。これにより他の建物との相対的な比較が可能となります。
[4]機能性建材*2データベース
機能性建材*2に関し、その機能ごとに整理し性能を比較検討できる社内データベースです。当社における機能性建材の利用実績、施工性あるいは性能検証結果などを社内で共有することを目的として開発され、現在では300以上の機能性建材の情報が収録されています。
この広範囲に集積され情報豊富なデータベースから建材を選択し、[1]~[3]の評価技術を用いて効果を確認することにより、実効性のある温暖化対策が提案できます。
なお、機能性建材データベースには温暖化対策に関する機能だけではなく、例えば調湿機能、耐熱機能、低汚染機能といった他の付加機能を有する建材も含まれています。
機能性建材の社内データベースシステム
三井住友建設では、「Cooling Together」により評価された実効性のある環境負荷低減技術を導入した建物を社会に提案していきます。まわりの人にやさしく、CO2排出量削減に貢献し、かつ確実な生活コストの低減を実現します。
また、さまざまな分野の技術を結集し社会のニーズに応えるだけでなく、今後とも良質な社会ストックの形成に貢献して行きます。
*1Cooling Together
みんなで、あるいはみんなのために環境配慮を推進することを意図したネーミングです。周辺環境問題、とりわけ温暖化対策は一つの建物計画で解決できるものではありません。みんなで行動してはじめて改善できるものです。みんなで"一緒にTogether"、"賢くcooling"、"温暖化防止cooling"を推進する、そういった願いを込めた名称です。
「Cooling Together」は当社が昨年度提案した環境共創プラットフォーム「E-Comfort Platform」*3のコンセプトに基づき当社の環境改善技術の1つとして開発されたものです。
*2機能性建材
一般的に「新しい機能が付加された建材」あるいは「著しく高機能な建材」を機能性建材と言います。例えば、高反射塗料は通常の塗料としての機能である"物体に色を着色・保護する"機能に"熱を多く反射させる"といった新たな機能が付加されているので機能性建材といえます。
*3環境共創プラットフォーム「E-Comfort」
環境共創プラットフォーム「E-Comfort Platform」とは、環境(Environment)、エコロジー(Ecology)、地球(Earth)の"E"と、快適性(Comfort)を組み合わせたもので、当社の環境経営理念から導かれる環境商品の根幹(プラットフォーム)をなす概念です。
お客様に提供する建物用途別に応じて、さまざまな環境要素(エコモジュール)を準備し、これらを適切に選定し、結合することによって当社の環境商品を提供します。
参考図 (熱環境シミュレーションの検証実験風景)
熱環境シミュレーションの検証実験 |
実験の再現計算 |
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