マンション建築向け"ダメージフリー躯体システム"を開発

―震災対応マンションSuKKiT Noahの新たなコンポーネント―

三井住友建設株式会社(東京都中央区佃二丁目1番6号 社長 則久 芳行)は、地震の揺れによる非構造部材の損傷を抑制することで、地震後も自宅マンションに住み続けることができるようにする"ダメージフリー躯体システム"を開発しました。

このシステムは、現在展開中の震災対応マンション"SuKKiT Noah(スキット・ノア)"の新たな構成技術で、東日本大震災による当社施工マンションの破損状況の調査・分析により、地震に対する弱点になることが懸念される部分をなくすことを目標に開発したシステムです。

■ 経 緯

本年3月11日の東日本大震災においても、当社施工マンションでは主要構造躯体には大きな損傷は受けませんでした。

しかしながら、雑壁などの2次部材や、2次部材と構造躯体の接続部に設けられた構造スリット材、構造躯体同士をつなぐエキスパンションジョイントなどには、損傷を受けたものが見られ、主要構造部でない部位の被害でも、マンション居住者の生活の継続に支障をきたしたり、不安感を助長したりするなど、いくつかの課題が浮き彫りになりました。

そこで、地震時に破損しやすい部位を減らし、これに替わる部材とすることで、地震後の不具合を減少させることを目標に"ダメージフリー躯体システム"の開発に取り組んできたものです。

■ ダメージフリー躯体システムとは

地震の揺れによる非構造部材の損傷(ダメージ)を、スリットレス・ウォールなどにより抑制することで、地震後も自宅マンションに住み続けることができるようにした躯体システムです。

■ ダメージフリー躯体システムの構成と特徴

"ダメージフリー躯体システム"は3つの要素で構成されています。

[1] スリットレス・ウォール (妻側開口耐震壁)

スリットレス・ウォールは、サッシ開口を確保しながら住棟妻側の外壁を耐震壁化する技術です。一般に耐震壁は構造耐力を確保するために開口部を設けることができません。また開口部を設置するために構造耐力を負担しない雑壁とする場合は、柱や梁の構造躯体との接続部には構造スリット材を設置する必要があります。

しかしながら、この構造スリットは一般的なファミリーマンションの場合1住戸当たり20mほどの長さになり設置に手間がかかるとともに、将来クラックや漏水の原因となることが懸念される場合がありました。

このたび、当社の26万戸に及ぶマンション施工実績をもとに、妻側住戸の開口状況を調査して開発したスリットレス・ウォールは、鉄筋コンクリート製耐震壁であり、構造スリットを設置せずに必要な開口部を設けることが可能で、従来の開口部がない耐震壁に比べてより明るい室内空間にできることが特徴です。

さらに、一般的な雑壁と異なり、スリットレス・ウォールでは間柱や梁が不要なため、室内にじゃまな出っ張りがなくなり有効空間が大きく広がります。間柱がなくなり、地中の杭や基礎も不要になることから、工期やコストの低減にも大きな効果があります。

図-1 住戸プランにおけるメリット
図-1 住戸プランにおけるメリット

[2] 外壁ALCパネル

バルコニーや外部廊下などに面する外壁は、原則としてALCパネル(Autoclaved Lightweight aerated Concrete: 高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリート)を使用します。ALCパネルは地震時の躯体への変形追従性が高いため、不具合の発生を低減させることができます。

コンクリート壁と同様にタイル貼りや吹付け塗装が可能であり、玄関周りやエアコン室外機置き場など、部位に応じた選択が可能です。また、軽量で断熱性が高いという利点もあります。

スリットレス・ウォールとALCパネルを使用することで、地震時に損傷する可能性のある構造スリット材を省略することができ、施工後の補修を含めたコストの低減や地震によるクラックの発生、漏水リスクを低減できます。これまでも当社設計施工マンションではALCパネルを使用してきましたが、ダメージフリー躯体システムにおいては、さらに積極的な導入を進めていきます。

[3] エキスパンションジョイントの削減

エキスパンションジョイントは建物躯体同士の接続部に設置される、建物の損傷を最小限に抑えるための非構造部材です。

地震時に部分的に大きな荷重が構造躯体に加わらないように設置されますが、エキスパンションジョイントそのものには曲げ・ねじれなど大きな力が集中し、変形などの不具合が発生しやすい部材でもあります。

そこで"ダメージフリー躯体システム"では、使用部位を減らすための住棟プランニングや免震構造の採用、地震時に損傷を受けにくいエキスパンションジョイントなど、地震後に住民の生活に支障をきたさないための技術を取り入れています。

■今後の展開

"ダメージフリー躯体システム"は、当社開発のSuKKiT Noah(スキット・ノア)に組み込むことで、地震に対してより粘り強さを発揮するマンションづくりが可能になります。これまで以上に安全性に関心が集まる首都圏でのマンション開発や東北での震災復興住宅などに対応できるコンセプトです。

今後も、このような提案を通じて、より一層のマンションの価値向上に寄与すべく、安全・安心・快適な住まいの創造を目指していきます。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

【参考】 SuKKit Noah (スキット・ノア)

震度5強程度の地震後も、ライフライン復旧までの1週間程度住み続けられ、また大規模な補修を必要としない震災対応マンションです。耐震性能の向上や住棟1階での駐車場計画など、平常時にはだれもがこれまでより使い易く、そして万が一の非常時にもその効果を発揮するデザインとしています。
(2011年7月13日発表)


参考写真-1
SuKKiT Noahの外観イメージ

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