"分割製作方式U桁リフティング架設工法"を実用化

― 首都圏中央連絡自動車道中野高架橋北工事が竣工 ―

三井住友建設株式会社(東京都中央区佃二丁目1番6号 社長 則久 芳行)は、市街地に建設される高架橋に最適な"分割製作方式U桁リフティング架設工法"を開発し、首都圏中央連絡自動車道中野高架橋北工事に技術提案して受注し、鋭意施工を進めてきましたが、このたび工事が竣工したことで工法の実用化が完了しました。

"分割製作方式U桁リフティング架設工法"は、U形断面のプレキャストセグメントを地上で場所打ち接合して一体化した桁の両端を、リフティングガーダーにより吊り上げて一括架設する急速施工法で、桁架設のために桁下空間は利用できるものの、桁製作ヤードに十分な広さを確保できない狭小な市街地での高架橋建設プロジェクトに最適です。

当社では、都市内高架橋向けに"U桁リフティング架設工法"および"後方組立方式スパンバイスパン工法"を開発し、それぞれ大規模建設プロジェクトに適用してきましたが、"分割製作方式U桁リフティング架設工法"の実用化により、架橋地点によってさまざまな条件下での最適解を選択できる架設工法メニューがさらに充実できたことから、今後さらに積極的に総合評価落札方式プロジェクトへの技術提案を進めていきます。

写真-1 中野高架橋の全景
写真-1 中野高架橋の全景

■ 経 緯

当社は、大規模な都市内高架橋建設プロジェクト向けの合理的な架設工法の技術開発を、2010年3月に開通した第二京阪道路の茄子作(なすづくり)地区高架橋工事および青山地区高架橋工事をターゲットにして、鋭意推進してきました。

二つの高架橋は、同種の構造形式でしたが、桁下の施工条件が異なっていました。

茄子作地区高架橋は、桁下の場内が整地された状態であり、施工ヤード面積も確保しやすい工事であったため、場内でプレキャスト桁を製作して一括架設する、シンプルで経済的な"U桁リフティング架設工法"を開発して適用しました。

一方、青山地区高架橋工事は、高架下の一般道改良工事が含まれており、桁下条件にさまざまな制約がありました。そこで、桁下空間を利用する必要のない工法を目標とし、工場製作のプレキャストセグメントを橋桁上で組み立てて架設する"後方組立方式スパンバイスパン工法"を実用化して適用しました。

この都市内高架橋の架設工法は、いずれも橋桁のプレキャスト化による急速施工、高品質、高い安全性を実現し、周辺に対する工事中の環境負荷を最小限に抑えることができる工法です。さらに、茄子作地区高架橋工事および青山地区高架橋工事では、プレキャスト工法におけるコストアップの一因となっていた架設ガーダーを軽量・最小化することで、従来工法に比べてコスト競争力が十分にあることが実証されました。

このような技術開発の経緯を踏まえ、桁下空間は利用できるものの製作ヤードが狭いという市街地に建設される高架橋向けに、"U桁リフティング架設工法"のコンセプトを受け継いで、さらなる合理化を図った新しい架設工法の技術開発を進めてきました。


写真-2
茄子作地区高架橋のU桁リフティング架設


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青山地区高架橋の後方組立方式
スパンバイスパン架設

■ 工事概要

首都圏中央連絡自動車道中野高架橋は、首都圏中央連絡自動車道(以下、圏央道)の海老名ジャンクションおよび新東名高速道路が交差する海老名南ジャンクションの中間に位置する都市内高架橋の建設工事です。

工事名:東名高速道路(改築)中野高架橋(PC上部工)北工事
発注者:中日本高速道路株式会社
工事場所:神奈川県海老名市
工 期:2008年12月23日~2011年10月8日
工事内容:中橋梁 PC8径間連続箱桁橋 橋長 307m
北橋梁 PC7径間連続箱桁橋 橋長 280m

当初、本工事は固定支保工施工法による場所打ちコンクリート桁で計画されていましたが、地盤に軟弱層があり支保工の沈下が懸念されたことのほか、施工中の騒音・振動など周辺環境への影響を低減できる工法が求められたことから、都市内高架橋の建設に実績のあるU桁リフティング架設工法の採用を検討しました。

しかしながら、本工事では、現場の敷地が狭く、十分な広さの桁製作ヤードを確保できなかったことから、U桁を5分割して製作し、接合架台上で間詰めコンクリートを施工しプレストレスを与えて一体化させる"分割製作方式U桁リフティング架設工法"を適用したものです。

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図-1 分割製作方式U桁リフティング架設工法の概念

■ 分割製作方式U桁リフティング架設工法 とは

"分割製作方式U桁リフティング架設工法"は、U形断面のプレキャストセグメントを地上で場所打ち接合して一体化した桁の両端を、リフティングガーダーにより吊り上げて一括架設する急速施工法で、桁の架設に桁下空間は利用できるものの桁製作ヤードに十分な広さを確保できない現場条件のプロジェクトに最適です。


写真-4
U桁セグメントの製作


写真-5
U桁のリフティング状況

■ 特 徴

  • 桁下空間は桁架設のために利用できるが、桁製作ヤードに十分な広さを確保できない現場条件の場合に最適です。
  • 地盤が軟弱の場合でも、桁製作ヤードのみ改良を行えばよく、固定支保工工法より有利です。

■ 施工順序

"分割製作方式U桁リフティング架設工法"の施工順序は、以下のとおりです。

【Step 1】 柱頭部セグメントの製作、架設
  U桁の架設に先立って柱頭部を施工します。

【Step 2】 U桁セグメントの製作、接合
  U桁接合架台の基数で、桁の製作サイクルが決まります。

【Step 3】 U桁の運搬、吊り上げ架設
  U桁架設は4日サイクルです。

【Step 4】 PC板の架設、上床版の施工
  床版はPC板の上に鉄筋を配置して場所打ちコンクリートを施工します。

このようなサイクルを繰り返して、1径間ごとに施工を進めていきます。

■ 今後の展開

当社は、これまでにもプレキャスト技術を活用した高品質かつ経済的で、さまざまな架橋条件に最適な構造形式や架設工法を数多く開発してきました。

このたび、桁製作ヤード用地に制約のある現場条件に最適な"分割製作方式U桁リフティング架設工法"が実用化したことで、30~50m程度の支間が多数連なる大規模高架橋建設プロジェクトにおいて、工期短縮、コスト縮減を実現できる最適工法の技術提案が、あらゆる現場条件に対して可能になりました。

このように、当社では都市内高架橋架設工法の選択肢がさらに拡大したことで、総合評価落札方式プロジェクトへの技術提案体制がさらに強化されたことになります。

当社では今後とも、技術者一人当たりの生産性を向上させながら、さらに幅広いニーズに応えることのできる構造形式と架設工法のラインナップを展開していきます。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

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