浮き屋根はそのままに、鋼製タンクにウルトラドームを設置

―我が国で初めて浮き屋根式タンクにウルトラドームを適用―

三井住友建設株式会社(東京都中央区佃二丁目1番6号 社長 則久芳行)は、既存の浮き屋根式タンク側壁頂部にウルトラドームを設置する雨水侵入対策工事を完成させました。

ウルトラドームは、アルミニウム合金製の三角形状の骨組を組み合わせた立体フレームと、このフレームを被覆するアルミニウム合金製パネルで構成された半球形構造物です。これまで上水道タンクで数多くの実績がありますが、浮き屋根式タンクへの適用は我が国で初めての事例です。

当社では、浮き屋根式タンクの長寿命化や貯蔵製品の品質確保に貢献すべく、ウルトラドームを積極的に提案していく計画です。

※ウルトラドームは、米国ウルトラフロート社の登録商標です。


写真-1 ウルトラドーム化した浮き屋根式タンク

■ 経 緯

当社は、1999年に我が国で初めてのアルミニウム合金製の屋根として、上水道タンクで"ウルトラドーム"を建設しました。それ以来、現在までに43基のアルミニウム合金製屋根建設の実績を有しており、豊富な設計・施工ノウハウに裏付けられたアルミニウム合金製屋根のエンジアリングを展開してきました。

一方、浮き屋根式の鋼製オープントップタンク(浮き屋根式タンク)では、雨水の浸入や、強風・積雪などによる浮き屋根の破損や揺動などが課題とされてきました。

そこで、当社ではこれらの課題を解決する手段として、浮き屋根式タンクへのウルトラドーム設置を提案してきており、既に2010年5月に危険物保安技術協会から直径120mまでの浮き屋根式タンク用屋根構造物の性能評価も取得しています。

■ エム・シー・ターミナル(株)川崎事業所 ウルトラドーム化工事

このたびのウルトラドーム化工事において、浮き屋根式タンクに設置したウルトラドームは直径約30m、総重量は14.2tで、投影面積あたりの重量は20kg/m²と非常に軽い構造です。このため、既存タンクの本体や基礎の補強などの改造が不要でした。また、タンクとの接合は既存側壁の天端に直接行うため、タンク側壁天端部改造なども不要となりました。

【工事概要】

発注者:ティー・エム・ターミナル株式会社
エム・シー・ターミナル株式会社
場 所:神奈川県川崎市
構 造:浮き屋根式危険物貯蔵タンク
内 径:30.028m
高 さ:15.2m
工事内容:開放点検工事、ウルトラドーム化工事、配管改造工事


図-1 ウルトラドーム化工事のイメージ

写真-2 竣工式の状況

■ ウルトラドームの特徴

ウルトラドームの主な特徴は以下のとおりです。

  • 本体が軽量なため浮き屋根上でも組立が可能であり、既存タンクの躯体や基礎への負担も軽減できます。
  • 部材がアルミニウム合金製のため、耐候性に優れ防食処置が不要です。
  • 組立がすべてボルト接合であるため、施工が容易で短期間で施工可能です。
  • 敷地の状況により、タンク内部または外部での組立てを選択することができます。

■ 浮き屋根式タンクにウルトラドームを設置するメリット

浮き屋根式タンクにウルトラドームを設置することには、以下のメリットがあります。

  • タンク内への雨水の浸入がなくなるため、水の混入を嫌う貯蔵物への悪影響を回避できます。
  • 強風や降雨および降雪による浮き屋根の揺動がなくなります。
  • 風雨があたらないため、塩類や酸性雨および腐食促進物質などの侵入がなくなり、鋼材の腐食や劣化が低減できます。
  • 紫外線が直接あたらなくなるため、浮き屋根の塗装の耐久性が向上します。
  • 浮き屋根の温度変化が緩和されて温度応力の変動を小さくすることができます。


写真-3 ウルトラドームの内側

■ 今後の展開

このたびのウルトラドーム化工事では、既存の浮き屋根式タンクの本体をほとんど改造することなく、アルミニウム合金製のウルトラドームの設置が可能となりました。

当社は、ウルトラドームを浮き屋根式タンクの屋根構造物として、積極的に提案し、タンク本体の長寿命化や貯蔵製品の品質確保に貢献していく計画です。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

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