緊急輸送道路沿道マンションを初めて免震改修― ハイレトロ構法 ―

三井住友建設株式会社(東京都中央区佃二丁目1番6号 社長 則久 芳行)は、緊急輸送道路沿道建築物である分譲マンション(所在地:東京都港区)の免震改修工事に、初めて"ハイレトロ構法"を適用し、このほど工事を完了させました。

"ハイレトロ構法"は、柱に設置する免震装置と、梁下に設置する粘性型の制震装置を組み合わせ、免震装置の減衰と制震装置の減衰をハイブリッドに機能させることで、建物を効率よく免震化する高性能な免震改修構法であり、これまでに事務所ビル、商業ビル、庁舎など4棟の実績があります。

また、このたびの免震改修工事では、民間建築物耐震化促進事業(港区)や住宅・建築物耐震化緊急支援事業(国土交通省)などの助成を受けており、今後はこのノウハウも活用し、民間分譲マンションなどに対して"ハイレトロ構法"を積極的に提案していく計画です。

■ ハイレトロ構法 とは


ハイレトロ構法のイメージ

柱に設置する免震装置と、梁下に設置する粘性型の制震装置を組み合わせ、免震装置の減衰と制震装置の減衰をハイブリッドに機能させることで、建物を効率よく免震化する高性能な免震改修構法です。地震の揺れを免震装置で絶縁するとともに、制震装置でエネルギーを吸収しながら揺れ幅を抑え、免震装置を設置するフロアー(階)以外での補強工事を行う必要がありません。

免震装置には、鉛プラグ入り積層ゴム支承、天然ゴム系積層ゴム支承やすべり支承などを用います。制震装置には、粘性型制震装置である制震壁や減衰こまなどを用います。

鉛プラグ入り積層ゴム支承(LRI)は、水平方向に柔らかい積層ゴム支承に、地震エネルギーを吸収する鉛プラグを組み合わせた免震支承です。天然ゴム系積層ゴム支承(NRI)は、ゴム材料として天然ゴムを用いた積層ゴム支承です。すべり支承は、すべり板の上をすべることによって水平方向の動きを拘束しない支承です。

減衰こま(RDT)は、地震による水平方向の動きを"こま"のような回転運動に変換するとともに動きを増幅し、効率よく減衰効果が得られる制震装置です。ハイレトロ構法は2000年に第一号を施工し、これまでに4棟の実績があります。


柱に設置した免震装置

鉛プラグ入り積層ゴム支承
減衰こま
減衰こま
すべり支承
すべり支承

■ ハイレトロ構法の施工手順

ハイレトロ構法の施工は、既存の柱を切断して免震装置を据え付ける工程と、制震装置を取り付ける工程に分かれています。これらの施工範囲は、すべて免震装置が設置される階のみに限定され、それ以外の居住環境に影響を与えません。

免震装置の据付手順は以下のとおりであり、この手順をすべての柱に対して行い、建物を免震化します。また、制震装置も免震装置と同一の階に設置します。

■ ハイレトロ構法 の特徴

  • 免震改修工事の範囲が免震装置を設置する階のみに限定され、柱や梁の補強も基本的に不要であり、居住したまま改修工事が行えます。
  • 制震装置により地震時の変形が小さく抑えられるため、狭隘な敷地の建物でも免震改修が可能です。
  • 免震化により地震力が大幅に低減されるため補強箇所が少なくて済み、工期と工費を抑えることができます。

■ ハイレトロ構法を適用した建物の概要

名称:チュリス西麻布
所在地:東京都港区
建築年月:1978年(昭和53年)
建物用途:共同住宅
建物規模:地上10階建
延べ面積:約3,700m²
建物高さ:35.4 m
構造種別:鉄骨鉄筋コンクリート構造
鉄筋コンクリート構造
構造形式:ラーメン構造(桁行方向)
耐震壁付ラーメン構造(梁間方向)
改修設計者:三井住友建設株式会社
改修施工者:三井住友建設株式会社


チェリス西麻布の外観

■ 経緯

チュリス西麻布は、いわゆる旧耐震基準に基づいて設計されていた建物であり、2006年に実施した耐震診断の結果、耐震改修が必要とされました。そこで、2008年に管理組合が大規模修繕についてアンケートにより組合員の意向調査を行うことから始め、建物の耐震改修について 組合員の合意形成を進めました。

構・工法については、耐震改修、制震改修との比較検討を経て、1階駐車場の駐車台数を減少させずに耐震性能を高めることができ、1階以外に補強工事の必要のないハイレトロ構法による免震改修が選定されました。

一方、この建物の前面の道路は、東京都により緊急輸送道路に指定されており、早急な耐震化が望まれていました。これにより、港区の民間建築物耐震化促進事業の助成を受けることができたほか、国土交通省が実施した住宅・建築物耐震化緊急支援事業も活用でき、各戸の負担が軽減されたことから、この免震改修が実現したものです。

■ ハイレトロ構法によるチュリス西麻布の免震改修

免震改修計画は、1階柱を中間部分で切断し、そこに免震装置を配置する中間階免震として計画しました。

免震装置は、鉛ブラグ入り積層ゴム、天然ゴム系積層ゴムおよびすべり支承としています。さらに、鉄骨階段下には転がり支承を配置しています。

地震時の水平変位を抑えるために、制震装置として減衰こまを設置しています。

免震装置は、各柱下に計16基、制震装置はX軸Y軸各方向に2箇所ずつ計4基設置しています。この建物の大地震時水平変形は設計では最大30cmとなっています。

この建物の免震改修計画では、大地震の後でも建物が軽微な補修程度で再使用できることを目標としています。

免震装置と制震装置の配置
免震装置と制震装置の配置

■ 今後の展開

チュリス西麻布の免震改修プロジェクトは、民間建築物耐震化促進事業(港区)や住宅・建築物耐震化緊急支援事業(国土交通省)などの助成を受けたことが大きな特徴になっており、今後はこのノウハウも活用し、民間分譲マンションなどに対して"ハイレトロ構法"を展開するとともに、顧客のニーズに合わせて"免震レトロフィット構法"や"制震レトロフィット構法"なども積極的に提案していく計画です。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

【参考】

免震レトロフィット構法

免震レトロフィット構法は、免震装置を特定の階に設置することで、地震による大きな揺れが建物の上階に伝わることを防ぐとともに、下階の負担を軽減する耐震改修構法です。

建物の基礎部分に免震ピットを構築して杭や基礎を除く建物全体を免震化する基礎免震構法と、特定の中間の階に免震装置を設置して装置設置階より上部を免震化する中間階免震構法があります。 "ハイレトロ構法"も免震レトロフィット構法の一種です。

当社の免震レトロフィット構法の実績は、チュリス西麻布の工事完成で11棟になりました。

制震レトロフィット構法

制震レトロフィット構法は、制震装置を建物の各階に設置し、地震のエネルギーを吸収して建物の揺れを抑える耐震改修構法です。

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