放射線量平面分布計測システムを開発し除染現場に適用

― GPSを用いた情報化施工技術を除染工事に活用推進 ―

三井住友建設株式会社(東京都中央区佃2-1-6 社長 則久 芳行)は、放射線物質で汚染された表土などの除染工事の効率化を図る"放射線量平面分布計測システム"を開発し、千葉県流山市の除染工事において適用しました。車載計測により、除染現場において、放射線量分布の可視化が即時的かつ良好に行えることを確認しました。

今後、同技術を除染現場で活用し、除去土量の減容化や、除染後の対象地区の放射線量分布の可視化など、様々な用途での応用展開を推進していきます。本システムの展開を通じ、被災地の一日も早い復旧を支援していきます。

■ 技術開発の背景

福島第一原子力発電所の事故によって生じた、放射性物質汚染土壌等の除染作業が、福島県を中心に各地で行われています。除染作業に伴う放射線量の測定は、現状では、計測員の手作業による場合がほとんどであり、計測点の間隔は10mから50m程度とされることが通常です。測定には手間と時間を要するため、放射線量の分布状態を詳細に把握しながら除染作業を進めることは容易ではありません。地表面の汚染濃度によっては、必ずしも削り取りが必要で無い部分も存在しますが、その場での判別が難しいため、余分な削り取りが行われる状況も生じます。削り取り土量の削減を図るためには、より効率的な作業手法の検討が望まれる状況にあります。

■ 技術の概要

本技術は、GPSを搭載した放射線量測定車を用いて、最新の線量マップをパソコン上にリアルタイムに表示するシステムです。表層土の削り取り作業を行う際に、本システムを活用することによって、必要の無い削り取りを行わず、処理土量を最小限に減容化することが可能となります。また、本システムを除染実施後の運動場や公園広場などの施設に適用すると、放射線量分布状態の"見える化"が可能となるため、利用者への安全・安心に関する情報提供面で有効に活用できます。

今回製作した平坦地用計測車(図-1参照)は、電動式カートに放射線量検出器(NaI シンチュレーション・サーベイメーター)、高精度GPS受信機(水平精度±20mm)を搭載し、毎秒1回の頻度で、放射線量と測定位置の情報をパソコンに取り込みます。取得したデータをもとに、パソコン画面上の現場平面図に放射線濃度に応じた色別区分により表示します。作業エリアをくまなく走行しながら計測することによって、放射線量の平面分布図が描かれます。

図-1 車載計測システム構成図
図-2 パソコンに表示される放射線量平面分布図の一例

■ 技術の特徴

本技術を除染工事で用いた場合には、以下のような効果・利点が考えられます。

  • 除染対象区域の放射線濃度の色分け平面分布マップを、CAD図面等に重ねて、その場で短時間で描くことができます。10,000m²程度の計測が4~5時間程度で実施可能です。
  • 放射線量色分け分布図から、表土の削り取りの必要な区画が現場で容易に分かるため、削り取り対象面積の縮小につながります。
  • 薄層で一度削り取り実施後に、さらに削り取りが必要な部分(区画)の有無がモニター画面から直ぐに確認できます。
  • 削り取り作業の各過程をデジタルデータおよび図表で提出できます。除染作業のエビデンスが確実に残せます。

■ 現場への適用

 当社のグループ会社であるSMCテック株式会社(千葉県流山市駒木 593 社長 井出 覚)が流山市から受託しました放射線量低減対策業務委託の一部において、本年6月末に本技術を適用しました。流山市総合運動公園内のピクニック広場およびアスレチック広場の2区域において、電動式カートを用いた計測車により、除染工事着手前の放射線当量率計測を実施しました。

計測車を走行しながら、地表から高さ5cm、50cm、100cmの3位置の空間放射線量を測定し、パソコン上に線量平面分布図を描画しました。その結果、汚染濃度分布状態が現地において、即時的かつ良好に認識できることが確認されました。本委託業務では、対象地域の表層の削り取りなどによる除染を今後行いますが、除染実施後の放射線当量率計測を、本技術を用いて引き続き実施する予定です。除染前後のデータの比較により、放射線量低減対策効果を明らかにするとともに、当該エリアの安心・安全に関する情報を可視化により、より解り易く提供できる予定です。


写真-1 計測状況 (流山市総合運動公園にて)


図-3 放射線量計測結果の一例 (除染前:高さ50cm)

<委託業務の概要>

委託業務名:公園等放射線量低減対策業務委託 (その9 総合運動公園)
委託者:流山市
受託者:SMCテック株式会社 (千葉県流山市駒木593 社長 井出 覚)
委託業務場所:千葉県流山市野々下1丁目地先 流山市総合運動公園内
履行期間: 平成24年5月23日~10月31日

■ 今後の展開

本技術は、このたび福島県が公募を行った平成24年度第1回福島県除染技術実証事業において、実地試験を実施する技術として選定されました(7月19日付)。福島県内のフィールドにおいて試験を実施し、各種条件下での技術の適用性を検証して行きます。実地試験の成果を踏まえ、さらなる適用範囲の拡大を目指して行く所存です。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

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