ベトナム ハノイ市環状3号線パッケージ2 早期竣工

―「たい焼き工法」で工期を半減 ―

三井住友建設株式会社(東京都中央区佃二丁目1番6号 社長 則久 芳行)は、ベトナム運輸省発注のODA案件、高架道路建設工事において契約工期「30カ月」を半分の「15カ月」で完工させ、ハノイ市での交通渋滞の早期改善と施工技術移転の両面で、ベトナムへ大きく貢献しました。

当社は1994年にベトナムへ進出して以来、土木部門は当社の得意とする大型プレストレス・コンクリート橋(PC橋)で13橋の施工実績があります。今回の工事は、その実績を生かすとともに当社の持つPC橋施工ノウハウを遺憾なく発揮し、斬新な省力化工法により工期半減しての竣工を実現したものです。

現地では10月21日に開通式典が行なわれました。式典にはグェン副首相、タン運輸大臣他多数のベトナム側出席者と、谷崎泰明ベトナム特命全権大使、築野元則JICAベトナム所長他、ODAに関係する日本側からの出席を得て、盛大に式典が挙行されました。

開通式テープカット
開通式テープカット
施工者挨拶
施工者挨拶

■ 工事概要

1. 工事名:ハノイ市環状3号線建設工事パッケージ2
2. 施工場所:ベトナム国ハノイ市タイン・スワン地区
3. 発注者:運輸省タンロン工事局
4. コンサルタント:㈱オリエンタルコンサルタンツ他3社
5. 契約工期:当初913日(30箇月)⇒最終15箇月
6. 施工業者:三井住友建設㈱ 単独施工
7. 橋梁延長:本線部2.070m、ランプ部448m 合計2,518m
8. 橋梁幅員:総幅員10.75m×上下線
9. 橋梁形式:3~5径間連続PCスーパーT桁橋
10. スーパーT桁:桁長 28m、33m、38m 計600本

■ 工法選択

施工場所はハノイ市の新都市部と呼ばれる地区で、住宅が密集した旧都心地区とは対照的に、高層ホテルやオフイスビル、新都市鉄道等の建設が活発に進められています。

ハノイ市環状3号線建設工事(全3パッケージ)は、総延長8.9km、上下各2車線の自動車専用高架道路です。側道として両側には各2車線の既存一般道が走っており、北部はノイバイ国際空港から南下する幹線道路、南部からはベトナム第三の都市ハイフォン市への国道5号線等多くの幹線道路と直結するため交通量はハノイ市内で最も多く、昼夜を問わず自動車、バイクで溢れています。

当社の施工区間は3パッケージ中の中間に位置し、両端に主要な大交差点があるため最も交通量が多い工区です。この様な場所では第三者災害の防止と、一刻も早い道路の供用開始が最大の使命となり、それを実現できる施工方法の選択が必須条件となりました。一方、工法選択のための好条件もありました。まず、当社の施工区間はほぼ直線工区であり、また構造物形状が一定でシステム施工に非常に適していました。加えて、以前施工した隣接工区で集積した施工ノウハウを、最大限活用できる状態でした。

■ 工法の施工と改善

当社が採用した施工方法は、まず下部工施工における支保工、足場、型枠の簡素化とそれらの合体による「省力化工法」です。下部工施工はフーチング、橋脚、脚頭部の各サイクルが2~7日の短工期で施工されました。橋脚施工では、橋脚用鋼製型枠に加え、支保工・足場を一体化した作業台を製作し、本線部分53基の橋脚施工場所へ移動、転用することで作業の効率化・省力化を図りました。脚頭部施工では、更に、支保工・足場・型枠の全てを一体化した鋼製大型型枠(システム型枠)を製作、使用しました。鉄筋は、専用架台で予め組立後、一体吊込を行ない、現場組立時間を短縮しました。

上記の、かなりの重量となる一体化作業台、システム型枠利用の施工を可能としたのが、60トン吊大型門型クレーンです。門型クレーンはトラッククレーン、クローラクレーンと比較して吊能力が大きい上に安定性が高く、現場への車両搬入が不要なことから交通災害等第三者災害の防止にも有効な工法でした(写真-1~3)。吊能力の増大により橋脚頭部の一体施工が可能になり、一般的なベトナムの工法では3分割で施工するのに比べ、当社は1回で施工できました。

次に上部工施工では、スーパーT桁と呼ばれる長さ28~38mの、東南アジア特有のPC桁600本の製作には、ベトナム初の現場蒸気養生システムを採用して製作設備を削減し、桁1本当りの通常の製作日数5日を、最短2日強の驚異的スピードで製作した点も大幅な工期短縮の要因です(写真-4)。更に、PC桁架設は、通常1径間10本に14日要する工程を、2台の門型クレーンによる相吊工法でわずか2晩で架設することができきました(写真-3)。

写真-1 フーチング型枠
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フーチング型枠
写真-2 システム型枠を脚頭部から外した様子
写真-2
システム型枠を脚頭部から外した様子
写真-3 門型クレーンによる桁架設
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門型クレーンによる桁架設
写真-4 スーパーT桁製作 (蒸気養生)
写真-4
スーパーT桁製作 (蒸気養生)
写真-5 組立済鉄筋(アンコ)の挿入状況
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組立済鉄筋(アンコ)の挿入状況

■ 脚頭部急速施工工法 愛称「たい焼き工法」

脚頭部の施工では、鋼製大型型枠(システム型枠)の施工状況が「たい焼き」を連想させ、現場ではこれを「たい焼き工法」と呼びました。左右からシステム型枠「たい焼きの焼き型」を組み立て、そこへ「アンコ」に見立てた組立済鉄筋を挿入し(写真-5)、「練った小麦粉の生地」に相当するコンクリートを打設して成型する。「たい焼き」ほど単純な「焼き型」ではありませんが、システム型枠を外した時に橋頭部ができ上がっている情景は、あたかも焼きあがった「たい焼き」のようでした。また、型枠等の大型化は現場の整理整頓にも大変役立ち、木製型枠の切断や組立・解体をすることも無く、整然とした環境下で、安全かつスピーディに施工は進行しました。


写真-6 下部工 施工状況

写真-7 上部工 施工状況

写真-8 竣工写真
写真-8 竣工写真

■ 今後の展望

2011年7月20日に着手した当工事は、契約工期の30カ月を半減させ、2012年10月下旬までの15カ月間で完成することができましたが、今回、当社が実践した施工方法は、実際には「新技術」とは言えず「従来工法の工夫と改善」と言うべきものです。しかしこれらは施工速度の向上、安全施工の確保等現在のベトナム建設業界で最も求められているものに対応して、顕著な効果を上げることができました。加えて、システム型枠の利用やPC桁の急速製作工は、施工速度(施工期間)の短縮のみならず、均一で高品質な構造体の出来形を確保する成果も導きました。

当社は今後も、現地で導入が容易な工法の「工夫と改善」に取り組み、インフラ建設を通してベトナムの発展に寄与してまいります。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

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