ヒンジ部の連続化によるPC橋補修技術を確立

―長崎自動車道鈴田橋上部工補修工事―

三井住友建設株式会社(東京都中央区佃二丁目1番6号 社長 則久 芳行)は、西日本高速道路株式会社発注の長崎自動車道鈴田橋上部工補修工事において、高速道路のPC箱桁橋で初めてゲルバーヒンジ部の撤去・連続化工事を行い、2012年11月22日に上り線の施工が完了しました。
ゲルバーヒンジ部とは、長大PC橋のクリープ・乾燥収縮や温度変化による主桁の伸縮量を吸収するために設ける主桁支間部の継ぎ目部のことで、両側の主桁の力を伝達する支承や伸縮装置が設置されています。ゲルバーヒンジ部は狭隘な部分であり、橋面上からの漏水や埃が堆積しやすくコンクリートが劣化しやすい部位です。
鈴田橋上部工補修工事では、劣化したコンクリート部を取り除くとともに将来の維持管理性を向上させるためにゲルバーヒンジ部を撤去し連続化を行ったものです。
これまで中央ヒンジ部の連続化工事は多数実施していますが、本工事でゲルバーヒンジ部という特殊な構造でも連続化工事が可能なことを実証し、PC橋の連続化技術を確立しました。

■ 経緯

鈴田橋は長崎自動車道諫早ICと大村IC間に位置し、国道34号線、JR大村線および鈴田川を横断する橋長798mの長大PC橋です。構造は中央部の458mは7径間連続ラーメン橋で中央部にゲルバーヒンジが設けられています。両側径間部はそれぞれ4径間連続箱桁、3径間連続箱桁で高速道路橋として初めて押出工法が採用された橋梁です。
本橋は1980年に建設され、2004年にはゲルバーヒンジ部周辺のひび割れについて詳細調査が実施されました。調査の結果、ひび割れの主な原因がアルカリ骨材反応であることが判明したため、抜本的な対策としてひび割れの顕著なゲルバーヒンジ部を撤去・打ち換えし、外ケーブルにより連続化する方法が採用されました。図-1に全体一般図と状況写真を示します。

■ 工事概要

  1. 工事名  :長崎自動車道 鈴田橋上部工補修工事
  2. 発注者  :西日本高速道路株式会社 九州支社
  3. 工事場所 :長崎県 大村市岩松町~大村市今村町
  4. 工期   :平成24年2月1日~平成25年12月21日
  5. 工事内容 :鈴田橋上部工ゲルバー部の取壊し、コンクリート打換えおよび外ケーブル補強による連続化工事(上下線)

■ 施工の特徴

ゲルバーヒンジ部の連続化工事の施工順序を図-2に示します。 ゲルバー部の撤去は、ワイヤーソーにより主桁を26ブロックに切断・分割して搬出しました。主桁の切断箇所には既設PC鋼棒の定着部が含まれるため、事前にグラウト充填状況を確認した上で施工しました。また、交通振動等によりPC鋼棒の付着が劣化することが懸念されたため、切断したPC鋼棒端部には新たに改良した「PC鋼棒用クサビ式定着具」を取付け再定着しました。
連続化部分の主桁コンクリートは打ち継ぎ目を設けずに一括打設することにより、工期短縮、耐久性向上に努めました。また外ケーブルは、エポキシストランドケーブルを採用し、主桁切断面から一括挿入することにより工期短縮を図りました。こうした施工の合理化・省力化により実施工程を当初計画工程と比較して25%(1ヶ月)短縮することができました。

図-2 施工順序
図-2 施工順序

■ 工程表

■ 施工状況写真

■ 今後の展開

今回補修対象となったゲルバーヒンジ部や中央ヒンジ部は狭隘な箇所で維持管理がしにくいと共に伸縮装置からの漏水が多く劣化しやすい部位です。こうした部分の抜本的な解決策としては、劣化部を撤去し連続化する方法が有効です。ゲルバーヒンジ部や中央ヒンジ部を有するPC橋は1970年~1980年代にかけて多く建設された橋梁形式で、今後老朽化に伴って劣化が顕在化してくる可能性が高いと言えます。当社はPC橋の連続化技術を今後もブラッシュアップし、PC橋の維持管理工事に積極的に技術提案していく方針です。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

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