桁端電気防食工法を開発

―コンクリート橋桁端部の劣化部を効率的に補修―

三井住友建設株式会社(東京都中央区佃二丁目1番6号 社長 則久 芳行)と住友大阪セメント株式会社(東京都千代田区六番町6番地28 社長 関根 福一)は共同で、コンクリート橋の主桁端部への適用に特化できる電気防食工法を開発しました。橋梁の主桁端部では伸縮装置からの漏水や凍結防止剤に含まれる塩化物イオンの影響により局所的に劣化が進行する事例が増えています。ところがこれらの箇所は作業空間が極めて狭いため、有効な補修方法が確立されていませんでした。

今回開発した桁端電気防食工法は、陽極材と型枠を一体化する事により狭隘な場所でも電気防食工法を施工できるようにしたもので、実際の橋梁を模擬した試験体により、施工性、防食効果を確認しました。

■技術開発の背景

高度経済成長期に建設されたコンクリート橋は、供用開始後40~50年を経て老朽化しつつあり、適切な維持・管理が必要とされています。特に橋梁の主桁端部では伸縮装置からの漏水や凍結防止剤に含まれる塩化物イオンの影響により鉄筋腐食に伴うコンクリートの浮き・はく離、ひび割れや鉄筋露出等の変状が多く報告されています。写真-1に損傷事例を示します。これらの損傷は局所的であるため初期の段階では橋梁全体の耐荷力等への影響は少ないものの、放置するならば支承近傍や桁端部のPC鋼材定着部の損傷へと進行することが予測され早期の対策が必要です。

ところがこれらの箇所は作業空間が極めて狭いため、有効な補修方法が確立されていませんでした。これらの課題を解決し、コンクリート橋の桁端部を効率的に補修し、橋梁の長寿命化を図るために「桁端電気防食工法」を開発しました。

写真-1 主桁端部の劣化状況
写真-1 主桁端部の劣化状況

■桁端電気防食工法の概要

本工法は図-1に示すように、コンクリート橋の桁端部の劣化部をはつり取った後に、陽極材と型枠を一体化したパネル(ECPパネル)を設置して特殊モルタルを注入することにより、陽極材の被覆と断面修復を同時に行う工法です。

陽極パネル(ECPパネル)は軽量であり、また分割をすることで一人でも容易に運搬・設置を行うことができます。モルタル硬化後、各パネルの陽極材を電源装置に接続し電気防食を開始します。通電後はパネルに設置した照合電極により内部鉄筋の腐食傾向を継続的に計測し、適切な通電量を設定します。

図-1 桁端電気防食工法概要図
図-1 桁端電気防食工法概要図

■工法の特徴

本工法は以下の特徴を有しています。

1. 施工が困難な遊間狭隘部の断面修復が可能です。
2. 桁端部のはつり作業はウォータージェット工法により行うため、内部鉄筋やPC鋼材定着部を傷めることがありません。
3. 従来工法では施工が困難であった桁端面に電気防食工法を適用できます。
4. 陽極材と型枠を一体化するため、省力化施工が可能です。
5. 照合電極を陽極と同時に設置しておくことで継続的にモニタリングすることが可能です。
6. 特殊被覆を施した陽極材の耐用年数は100年間で、橋梁の長寿命化が図れます。

写真-2 陽極パネル(ECPパネル)
写真-2 陽極パネル(ECPパネル)

■今後の展開

高度経済成長期に建設されたコンクリート橋は、供用開始後40~50年を経て老朽化しつつあり、適切な維持・管理が必要とされています。特に橋梁の主桁端部では伸縮装置からの漏水や凍結防止剤に含まれる塩化物イオンの影響により局所的に劣化が進行する事例が増えています。

三井住友建設と住友大阪セメントでは、こうしたコンクリート橋の劣化に対して桁端電気防食工法の適用を積極的に提案し、橋梁長寿命化に貢献したいと考えています。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

[参考]

桁端電気防食工法の施工要領

図-2 施工要領図
図-2 施工要領図

■実証試験

本工法の防食効果、施工性を確認するため実際のRC中空床版橋の桁端部を模擬した供試体を作製し、試験施工を行いました。供試体は端部から200mmの範囲は塩化物イオン量が20kg/m3となるようにコンクリート中に塩分を混入し、桁端部の厳しい腐食環境を再現しました。

試験施工では、ウォータージェット工法による狭隘部のはつり性能や陽極パネル(ECPパネル)の施工性を確認しました。電気防食を開始し鉄筋の腐食傾向を継続的に計測した結果、多量の塩分量を含むコンクリート中においても内部鉄筋は腐食傾向を示しておらず十分な防食効果があることが確認されました。

写真-3 WJ工法によるはつり状況
写真-3 WJ工法によるはつり状況

写真-4 電気防食効果の確認
写真-4 電気防食効果の確認

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