トンネル補修工事データベース・マネジメント・システムを現場適用

― トンネル補修履歴のデータベース化によりライフサイクル管理 ―

三井住友建設株式会社(東京都中央区佃2-1-6 社長 則久 芳行)は、室蘭工業大学板倉賢一研究室(北海道室蘭市水元町 27-1 学長 佐藤 一彦)、日本原子力研究開発機構(茨城県那珂郡東海村村松4番地49 理事長 松浦 祥次郎)と開発したトンネル・ライフサイクル管理のためのデータベース・マネジメント・システムを、トンネル補修工事管理用に「ジェネシス-LTR(*1)」として、静岡市発注の平成25年度葵北県道第9号(主)梅ヶ島温泉昭和線(美和トンネル)災害防除工事の覆工背面空洞充填工事に適用しました。

「ジェネシス-LTR」は、トンネル補修工事における各種設計・施工情報をデータベース化し、施工管理、ならびにライフサイクル管理にフィードバックするシステムです。「ジュネシス-LTR」では、従来と同等の入力作業でタブレット端末等に施工情報、たとえば覆工背面空洞充填であれば穿孔覆工厚、空洞幅、充填材料品質、充填量、充填圧等を入力するだけで、自動的に補修工事の履歴データベースが作成されます。作成されたデータベースを利用した工事日報作成機能、品質・出来形管理情報の帳票機能、各種施工データのグラフ化・図化機能等が装備され、工事管理業務の効率化、高度化を推進するエンジニアリング・ソリューション・システムとしても活用できます。

Tablet PCに搭載したシステムによる覆工背面空洞状況の撮影・記録作業
Tablet PCに搭載したシステムによる覆工背面空洞状況の撮影・記録作業

※上記研究開発は、一般財団法人日本建設情報総合センター平成22年度研究助成事業「トンネルのライフサイクルマネージメントに供するプロダクトデータモデルの研究(第2010-06号)」で開発した3次元トンネルCIMを現業事務所のPC等で実行できるようひび割れ展開図を利用して2次元化したシステムです。

*1) LTR【Legacy Tunnel Rehabilitation records】
ジェネシス-LTRについては参考資料もご覧ください。

 

技術開発の背景

トンネルのライフサイクル管理を適正に実施するためには、定期的な点検・調査の実施と、これに基づいた適切な補修が不可欠です。また、その補修履歴は、以降のトンネル維持管理の基礎データとして活用されなければなりません。しかしながら、今日、トンネル補修履歴は検査、竣工時に提出される工事報告等を除いて保存されることはなく、それらがトンネルのライフサイクル管理に活用されることはほとんどありません。また補修工事は一般に工期が短く、施工体制も少人数編成であるため、施工管理関連の書類作成等に費やされる事務負担が相対的に大きく、その効率化も大きな問題となっています。

 

■ ジェネシス-LTRの特長

(1) 簡便な入力操作、携帯性

入力項目、画面および様式等は、実工事における業務管理を分析し選定しているので、現場技術者が違和感なく入力作業を実施できます。またXML(*2)を用いてデータベースを記述することで特記事項や特異事象のデータ入力・操作に柔軟性を与えました。また、携帯端末からの入力も可能です。

(2) 直感的なデータ操作

データ処理のユーザー・インターフェースにトンネル維持管理の基礎資料であるひび割れ展開図を採用し、展開図上から各種データへのアクセスを可能としました。これによりデータベースに習熟しないユーザーでも、直感的にデータ検索が行え、処理することが可能です。

(3) データ互換性

XMLによってデータベースを記述することで、他の様式等への変換が容易になります。またデータの拡張や組み換えなどに容易に対応することが可能です。

(4) 他社CIMへのデータの利活用

施工情報はデータベース上で設計情報や位置情報などと関連付けがなされており、他社開発のCIM(*3)へデータ移行し、活用することも可能です。

*2) XML【eXtensible Markup Language】

XMLは、異なる情報システムの間、特にインターネットを介する情報システムの間で、構造化された文書やデータの共有や交換を容易にする目的で制定されたデータ形式です。現在、スプレッドシートやワープロ等のオフィスアプリケーションはもとより、リレーショナルデータベース等のバックオフィスアプリケーションなどの多くが、データ形式としてXML文書をサポートしています。

*3) CIM 【Construction Information Modeling】

CIMとは、調査・設計段階から三次元モデルを導入し、施工、維持管理の各段階での三次元モデルに連携・発展させることにより、設計段階での様々な検討を可能とするとともに、一連の建設生産システムの効率化を図るものです。三次元モデルは、各段階で追加、充実化され維持管理段階での効率的な活用を図っています。

 

■ 今後の展開

今後は、ジェネシス-LTRで開発した機能をベースに、逐次、トンネル工事や大規模造成工事等の施工管理・品質管理業務の高度化、省力化にむけたシステムの開発を推進してまいります。また、これらのデータを一元的に管理するデータベース・サーバーを技術開発センター内に整備中であり、既存データの施工計画、維持補修計画作成等へのフィードバックシステムにも取り組んでまいります。

 

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

 

[参考資料]

■ジェネシス-LTRの実際

ジェネシス-LTRは、データ入力部とデータ処理部から構成されます。

【入力部】

データ入力部は、従来業務と同様の管理項目を入力することで施工管理業務が実施できるように設計されているため、業務の二重化にならず職員の業務負担を大きく軽減します。なお、入力はタブレット等の携帯端末からでも可能です。

入力された各種データは、XML(Extensible Markup Language)言語をベースとしたローカルデータベース上に構築されるため、既存のRDBMS(Relational Database Management System)などへの移行や統合化を効率的に進めることが可能です。

ジェネシス-LTR入力画面例
ジェネシス-LTR入力画面例

 

【データ処理部】

データ処理部のユーザー・インターフェースには、トンネル調査・点検時に作成されたひび割れ・変状展開図を採用しました。この展開図上の任意の位置を、クリックするとその近傍で実施した補修工種と施工管理項目が表示され、これに関連した任意のデータへアクセスし、処理することが可能です。このため、データベース・マネジメントの知識がないユーザーでも直感的にデータ処理を行うことができます。

ジェネシス-LTRユーザー・インターフェース
ジェネシス-LTRユーザー・インターフェース

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