レジリエントな大空間構造を実現する「損傷制御型トラス梁」の開発に着手
―防災・減災機能の強化による安全・安心な建物づくりへの取り組み―
三井住友建設株式会社(東京都中央区佃二丁目1番6号 社長 新井 英雄)は、国立大学法人東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 吉敷 祥一准教授と共同で、鋼製のトラス梁に座屈拘束部材を組み込んだ「損傷制御型トラス梁」(※1)の開発に着手しました。
本構造の適用によって、地震時の被害低減と早期復旧を実現するレジリエントな大空間構造の構築を可能にします。そしてこのたび当社技術研究所(千葉県流山市)にて本トラス梁の加力実験を行い、優れた構造性能を確認しました。
※1 特許出願済み。
【「損傷制御型トラス梁」のイメージ図】
■ 開発の背景
阪神・淡路大震災(1995年)や東日本大震災(2011年)などの被災経験から、公的機関や企業は、災害が発生した場合の損害を最小限に抑え、事業の継続と早期復旧を図るためのBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の策定に取り組んできました。
一般に、生産施設などの大空間構造の構築に適したトラス梁は、地震時に圧縮力を受ける部材(上・下弦材または斜材)で座屈が生じ易いため、これらの部材に十分な強度を確保する設計を行う必要があります。しかし、想定を上回る大地震に対しては損傷の範囲や度合いの特定が難しく、経済性と被災時の修復性の両面を実現する設計に課題がありました。
そこで当社と東京工業大学は、レジリエントな大空間構造を実現する新たな鋼製のトラス梁として、耐震性はもとより経済性と修復性に優れた「損傷制御型トラス梁」の開発に着手しました。
■「損傷制御型トラス梁」の概要
本トラス梁は、梁両端部付近の下弦材部分に座屈拘束部材を組み込んだ構造になっています。地震によって生じる力と変形はこの座屈拘束部材が吸収するため、斜材や上弦材、下弦材の座屈を防ぐことができます。このたび本トラス梁の加力実験を実施し、一般のトラス梁では座屈が生じてしまうような大変形まで安定した耐力を発揮する構造性能を検証しました。また、変形は想定どおり座屈拘束部材に集中し、その他の部材には座屈などの損傷がほぼ生じないことを確認しました。
■「損傷制御型トラス梁」の特長
- 座屈拘束部材に変形を集中させる梁構造であるため、大地震後も簡易な点検のみで工場や事業所等の生産活動を早期に再開できます。
- 座屈拘束部材の変形が過大な場合であっても、本部材を交換するだけで修復可能であり、復旧期間を大幅に短縮できます。
- 耐震性能は座屈拘束部材の性能や仕様でほぼ決まるため、修復に要するコストをあらかじめ算定できます。
- 設計で用いる地震力を低減できるため、経済的な設計が可能となります。
【トラス梁を使用した建物の損傷イメージ】
【損傷制御型トラス梁の加力実験】
■ 今後の展開
当社では、持続可能な社会の実現に向けたサスティナブルな技術開発など、SDGs(※2)に対応するための取り組みを推進しています。今後は、生産施設をはじめ、体育館、展示場、イベント施設などに適した損傷制御型トラス梁の設計法や施工法を整備し、耐震性やBCPの面でお客様のニーズにより柔軟に対応できる大空間構造の実現に取り組んでまいります。
※2
SDGs:持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。(引用:外務省HP)
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