地震時における免震建物の動きを計測するジョイスティック変位計を開発

― けがき式記録計に代わる新たな計測方法で建物変位の見える化 ―

三井住友建設株式会社(東京都中央区佃二丁目1番6号 社長 新井 英雄)は、地震時における免震建物の動きを計測するジョイスティック変位計(※)を開発し、R&D センター(千葉県流山市)で振動台実験による性能検証を行い、その有効性を確認しました。

本変位計は、建物の免震層の上下間で固定設置するもので、地震時の水平方向の動きに合わせて伸縮ロッドが傾き、直交する2方向の水平変位を計測します。パソコンなど表示システムを組み合わせることで、免震層の動きをリアルタイムに確認することができ、建物の健全性と継続使用の可否を地震直後に判断することができます。

(※)特許出願中

 

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【ジョイスティック変位計(左)と設置イメージ(右)】

 

■ ジョイスティック変位計の特長

[1] 省スペース化と設置が簡易な構造

伸縮ロッドの採用により設置高さの最小化と、水平変位±80cmの仕様の場合、半径80cm、高さ150cmの円錐空間内に設置ができ、省スペース化を実現します。免震層への取り付けも上下部の固定のみと簡単で、短時間で行うことができます。

[2] 優れたコストパフォーマンス

地震時の水平変位の計測にジョイスティックを採用することで、コスト削減を図りました。一般的に用いられる「けがき式記録計」と同程度の費用で設置できます。

[3] リアルタイムで遠隔モニタリング

パソコンなどの表示システムを組み合わせた変位モニタリングシステムでは、免震層の動きを遠隔よりリアルタイムで確認できます。免震層に入る必要がないため、地震直後に建物の健全性を安全に確認できます。

 

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【けがき式記録計】

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【当社R&D センターでの実証試験の様子】

 

■ 開発の経緯

地震時における免震建物の健全性や継続使用の可否を客観的に判断するためには、免震層の水平変位を計測する必要があります。免震層の水平変位を記録する手段としては、板に針で傷をつける「けがき式記録計」が多く用いられていますが、建物の健全性が確認される前に、余震の可能性がある中で免震層に立ち入らなければ記録が確認できないという課題がありました。また、「けがき式記録計」は免震層の最大変位や、それが生じた方向を確認することはできますが、時間的な変化(動き方)はわかりませんでした。一方、時間的な変化を捉えるために、ワイヤー式やレーザー式の変位計を設置するケースもあります。この方法によれば免震層に立ち入らずに記録が確認できます。ただし、これら変位計は1方向の変位しか計測できないため、免震層の動きを捉えるためには最低2台の変位計が必要となりコストが嵩み、さらに各変位計の設置が煩雑になり手間もかかります。

このような状況を踏まえ、当社では、地震時における免震層の動きを遠隔から確認できる低コストの変位モニタリングシステムの開発に取り組んでまいりました。

 

■ 今後の展開

当社では、建物の健全性や継続使用の可否を地震直後に客観的に判断するとともに、免震建物の優れた耐震性能を維持するためのメンテナンスを確実に行うために、変位モニタリングシステムの普及を目指しています。今後は、「けがき式記録計」に代わる計測システム、さらには地震後の建物健全性評価に資する計測システムとして、ジョイスティック変位計を使用したモニタリングシステムの積極的な適用を進めてまいります。

<お問い合わせ先>

三井住友建設広報室【お問い合わせフォーム】

リリースに記載している情報は発表時のものです。

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