ワイヤレス振動センサを用いた「即時異常検知システム」を開発
― 実大構造物での加振実験により有効性を確認 ―
三井住友建設株式会社(東京都中央区佃二丁目1番6号 社長 新井 英雄)は、E-ディフェンス(実大三次元震動破壊実験施設)で行われた実大構造物(3階建て鉄筋コンクリート造)の大型振動台実験(※1)に付加計測チームとして参加しました。ワイヤレス振動センサを用いた「即時異常検知システム」を実大構造物に設置し、本システムが無線ネットワークの環境下で構造物のわずかな変化をリアルタイムに検知することを確認しました。
(※1) 国立研究開発法人防災科学技術研究所が取り組む首都圏を中心としたレジリエンス総合力向上プロジェクトのサブプロジェクト(c)非構造部材を含む構造物の崩壊余裕度に関するデータ収集・整備の研究課題「災害拠点建物の安全度即時評価および継続使用性即時判定」(分担責任者:東京大学 地震研究所 楠 浩一教授、防災科学技術研究所 地震減災実験研究部門 中村 いずみ主任研究員)において E-ディフェンスを活用し実施された振動台実験。
【加振実験の様子(左)とワイヤレス振動センサノード(右)】 |
本システムは、国立大学法人東京大学 生産技術研究所 水谷 司准教授と共同開発した異常判定手法(特長①参照、特許出願済み)を、無線ネットワークの環境下で効率的に稼働させたものです。計測とデータ通信、ならびにセンサノード上でのエッジコンピューティングの実装は、ソナス株式会社(東京都文京区本郷5-24-2 代表取締役CEO 大原 壮太郎)との共同開発の成果です。
■「即時異常検知システム」の特長
- 測定値の統計的な情報を随時学習し、日常的なごくわずかな振動(常時微動)から構造物固有の特性値の変化を自動判定します。構造物の特性値を事前に知る必要のない、汎用性の高い異常判定手法を採用しています。
- センサ内に搭載したCPU(中央処理装置)で数値計算を行うことにより、判定に必要な情報を迅速に収集し、構造物の異常をリアルタイムに検知します。
■ 開発の経緯
構造物の状態は、原則として目視など人による点検で調べるしかありませんでした。しかし、既設インフラの老朽化、技術者不足といった社会背景のもとで、人による保守点検に頼ったスキームには、抜本的な変革が必要とされています。
殊に大地震発生時には、被災後すぐに使用可否の判断を迅速に行いたいというニーズがあります。そこで当社では、2014年に長大橋梁において無線ネットワークにより広範囲を一括して監視する「橋梁地震時モニタリングシステム」を開発して適用しました。以後、長崎県の軍艦島における老朽化が進む建築物への適用と遠隔地からの常時モニタリングを実現する(※2)など、複数の橋梁や建築物を対象とした計測を実施しながら、社会課題を解決に向けた取り組みを積み重ねてまいりました。
(※2)「軍艦島」を対象とした構造物「ヘルスモニタリングシステム」の実証運用を開始(2018年6月25日リリース)
■ 今後の展開
当社は、「はし」(橋梁)や「まち」(建築物)、すべての構造物に適用可能なインフラ維持管理プラットフォームの構築に向けた取り組みを行っています。今後は、今回検証したシステムの実構造物への適用を進めるとともに、モニタリング技術の未来を展望し、サスティナブルな社会の創造に向けて開発を推進してまいります。
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