超高耐久床版(Dura-Slab®)を高速道路本線橋に初採用
― 腐食劣化と決別した非鉄製床版を実用化 ―
NEXCO西日本(大阪市北区、代表取締役社長:前川 秀和)と三井住友建設株式会社(東京都中央区、代表取締役社長:近藤 重敏)は、鉄筋やPC鋼材に代わり、腐食しない新材料を緊張材として用いた超高耐久床版『Dura-Slab』を中国自動車道「蓼野第二橋下り線」の床版取替え工事に高速道路橋として初めて採用します。
両社は、非鉄製橋梁構造物に関する共同研究を平成22年3月より進めてきました。このたび、実証実験にて、施工性や安全性が確認できたことから、『Dura-Slab』を蓼野第二橋に初採用します。なお、並行して開発した箱桁構造の超高耐久橋梁「Dura-Bridge」、プレキャスト製の超高耐久壁高欄「Dura-Barrier」は昨年完成しました徳島自動車道別埜谷橋で本線橋として採用しております。
本技術はDura-Bridgeと同様に鋼材腐食によるコンクリート片はく落などによる第三者被害を防ぐとともに、耐久性の向上により長寿命化が図られ、維持管理、更新時のCO2削減も実現します。飛来塩分や凍結防止剤散布による鋼材の腐食環境が厳しい箇所での床版取替え工事などに有効です。
図-1 超高耐久床版の概要図
注) アラミドFRPロッドは、PC鋼材の代替えとなる引張力に強いアラミド繊維を束ねた棒状の材料です。
1. 経緯
高速道路橋は、経過年数に伴う老朽化だけでなく交通量と車両総重量の増加、凍結防止剤の散布や沿岸部での塩害などによる劣化が進行しています。この課題に対し、高速道路リニューアルプロジェクトにおける鉄筋コンクリート床版の取替え工事への適用を目指し、鉄筋やPC鋼材などの鋼材を一切用いないDura-Slabについて、開発を進めてきました。
これまでに、輪荷重走行試験や要素試験により十分な耐力を有していることを確認し、実証橋建設により施工性や安全性などの確認を行うことで、本線橋への適用性を検証してきました。
表-1 実証橋や実験一覧
|
試験 |
確認項目 |
得られた知見 |
---|---|---|---|
1. |
輪荷重走行試験 |
|
|
2. |
実証橋建設 |
|
|
3.
|
要素試験 |
|
|
4. |
要素試験 |
|
|
![]() 写真-1 輪荷重走行試験 |
![]() 写真-2 実証橋建設 |
![]() 写真-3 要素試験(鋼桁との接合部) |
![]() 写真-4 要素試験(緊張材の施工性) |
2. 本工事の目的
これまでの様々な実証実験により、超高耐久床版の技術を確立できたことから、本線橋で採用します。
3. 工事場所
中国自動車道 六日市IC~鹿野IC間で床版取替工事を予定している「蓼野第二橋」下り線で、超高耐久床版を採用します。
図-2 工事場所
4. 床版取替工事の構造
工場で製作した複数のDura-Slab床版パネルを現地に運搬し、床版取替することで、橋長103mの床版がリニューアルされます。
図-3 床版構造
5. スケジュール
※今後の現場進捗により、変更になる場合があります。
6. Dura-Slabの特徴
[1] 腐食劣化を排除
-
設計基準強度80N/mm2の高強度繊維補強コンクリートを使用することにより、鉄筋の配置をなくし、PC鋼材の代わりにアラミドFRPロッドを使用してプレストレスを導入することで、腐食劣化の可能性を排除しました。
[2] 床版の構造
- 本プレキャスト床版の構造は、橋軸直角方向に対して水平リブを有し、さらにアラミドFRPロッドによりプレストレスを導入しています。
- 一般的なプレキャストPC床版は、500mm程度の現場打ち間詰め部を設け、そこにループ形状の鉄筋などを配置しコンクリートを打設することで一体化されています(図-4)。一方、本床版構造は間詰め部を約30mmとした上で、アラミドFRPロッドで橋軸方向にプレストレスを導入することにより連結するため、間詰め部の耐久性も向上します(図-5)。
- 床版厚を一般的なプレキャスト床版より約2割(220mm→180mm)薄くできます。
- 耐久性確保のため,スタッド部も含め,床版上面には孔を一切設けません(図-6)。
[3] 第三者被害の防止、耐久性向上、維持管理費の低減
-
鋼材腐食に起因するコンクリート片のはく落による第三者被害が発生しません。また、軽量化により耐震性も向上します。これらにより、将来の維持管理の人的及び経済的負荷の低減が可能です。
[4] サスティナビリティ
-
腐食劣化因子の排除により高耐久化・長寿命化を実現しているため,将来の補修・補強や更新工事を抑制できます。このため,ライフサイクルでの地球温暖化ガスの排出量を低減できます。
![]() 図-4 一般的なプレキャストPC床版の接合構造 |
![]() 図-5 超高耐久床版の接合構造 |
図-6 Dura-Slabの鋼桁との接合部
7. 今後の展開
本工事により得られた知見を活用し、当工法の適用拡大に向けた基準類の整備を進めていきます。
今後は、飛来塩分や凍結防止剤散布による鋼材の腐食環境が厳しい、高い耐久性が望まれる本線構造物への展開を目指します
<お問い合わせ先>
リリースに記載している情報は発表時のものです。