精密衝撃破砕工法「SMartD®」を床版取替工事で初適用
― 応力波の伝播誘導で馬蹄形ジベル周辺のコンクリートを効率的に破砕 ―
三井住友建設株式会社(東京都中央区佃二丁目1番6号 社長 近藤 重敏)は、精密衝撃破砕工法「SMartD®」(※1)を現在施工中の床版取替工事(鋼・RC(鉄筋コンクリート)合成桁橋)(※2)で初めて適用しました。
「SMartD」は、コンクリート構造物を効率的に解体できる位置と方向に破砕面(ひび割れ)が形成されるよう装薬配置等を設計し、その装薬箇所に小規模な衝撃(※3)を与え構造物を破砕する精密衝撃破砕工法です。今回初適用した合成桁では、鋼桁とRC床版を一体化している馬蹄形ジベル周辺のコンクリートを集中的に破砕し、既設床版の効率的な分離・解体を実現しました。
本工法は、東京大学大学院新領域創成科学研究科 上西 幸司 教授の指導のもと、研究・開発を進めてまいりました。
(※1) SMartD = Sumitomo-Mitsui Advanced shock wave Reflecting Technique for Demolitionの略
(※2) 名神高速道路 長良川橋
(※3) 衝撃発生源には放電破砕工法(㈱ニチゾウテックの保有技術である放電破砕工法EDICS)を採用
【「SMartD」によるコンクリートの破砕状況】
【「SMartD」による合成桁の床版分離・解体作業の流れ】
■ 合成桁に初適用した「SMartD」の概要
一般的に、コンクリートの破砕はウォータジェット工法や人力によるはつりで行われますが、馬蹄形ジベルを用いた合成桁では鋼桁と床版のコンクリートがジベルにより一体化され、鋼桁と床版を分離・解体することが著しく困難です。そこで、ジベル周辺のコンクリートを集中的に破砕する装薬配置を設計し、破砕効果や鋼桁への影響を数値シミュレーションや模擬破砕実験等により確認しました。実際の適用時にも定常騒音や破砕コンクリート片の飛散等は発生せず、事前検討通り鋼桁への影響がないことを確認しました。本工法は水を使用しないため、水質保全が求められる河川上でも適用することができます。
【馬蹄形ジベルのリングに沿った破砕面(模擬破砕実験)】
■ 設計した装薬配置による3つの破砕効果
設計した装薬配置を採用すると、3つの破砕効果により、鋼桁と床版のコンクリートを効果的に分離することが可能となります。
- 反射応力波の鋼桁のフランジ面上を伝播する成分(界面波)が、フランジと床版のコンクリートを分離。
- 金属部材である馬蹄形ジベル内を伝播する反射応力波は、コンクリートよりも速く、かつ低減衰で伝播するため、ジベルのリングに沿った破砕面を形成。
- 深部装薬によるフランジ面上の強い反射応力波が、馬蹄形ジベル周辺のコンクリートを細かく破砕。
【反射応力波誘導による馬蹄形ジベル周辺解体の設計概念】
■ 今後の展開
鋼・RC合成桁橋の床版取替工事において、安全で効果的な床版の分離・解体を実現しました。今後は、施工効率がよく、水を使わず汚濁水を発生させない環境配慮型技術として、本工法のさらなる現場適用を進めてまいります。
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