支保工が省略可能なPC橋梁の合理化施工法「Rap-con for staging工法」を開発・初適用
― 波形鋼板ウェブを架設材とし施工の省力化による生産性の向上を実現 ―
三井住友建設株式会社(東京都中央区佃二丁目1番6号 社長 近藤 重敏)は、プレストレストコンクリート(PC)橋の支保工を用いた施工部の合理化を実現する「Rap-con for staging工法」(※1) を開発し、新東名高速道路皆瀬川橋(仮称)にて初適用しました。
本工法は、先行架設する波形鋼板ウェブを架設材として活用することで、支保工の組立・解体作業を省略可能とする合理化施工法です。
(※) 特許出願済み
【「Rap-con for staging工法」を初適用した新東名高速道路皆瀬川橋(仮称)】
■ 開発の経緯
新東名高速道路皆瀬川橋(仮称)は、二級河川皆瀬川を跨ぐ急峻地形に計画された上下線から構成される波形鋼板ウェブ箱桁橋です。架設工法は、河川を跨ぐ3径間は片持ち張出架設、それ以外の区間は固定支保工架設で計画されていました。しかし、固定支保工区間の地盤は転石が点在していることに加え、急峻かつ脆弱なため支保工基礎の構築には大規模な地形の改変が必要でした。
そこで、波形鋼板ウェブを架設材として活用し、地盤からの支保工を省略可能とする新たな合理化施工法を開発しました。
■「Rap-con for staging工法」の概要
本工法は、波形鋼板ウェブを架設材とし、プレキャスト(PCa)部材を活用することで、施工の省力化による生産性の向上を実現しました。従来の固定支保工を用いたコンクリートウェブ橋と比べて、場所打ちコンクリート量を約40%低減しました。
施工手順は、波形鋼板ウェブを先行して架設し、下床版は波形鋼板の下フランジ上にPCa下床版を敷設、間詰コンクリートで一体化します。上床版は、波形鋼板ウェブ箱桁橋における当社独自工法の「Rap-con工法」(※2) で多くの実績を有するリブ付きPC合成床版構造とし、PCaリブを波形鋼板の上フランジ上に敷設、その後リブ間に埋設型枠となるPC板を敷設し、場所打ちコンクリートを打設します。主桁構築後に、壁高欄を施工します。
PCa下床版と波形鋼板ウェブの接合部には、施工性と耐荷性、耐久性に優れた「Trunc-head®(トランクヘッド)」(※3) を使用。また、間詰コンクリートの一部には、低発熱・低収縮の「サスティンクリート®」(※4) を採用し、ひび割れ発生リスクを低減しました。
(※2) 波形鋼板を架設材として利用して架設作業車を簡略化・軽量化するとともに、複数のブロックを同時に施工して省力化・急速化を図る、波形鋼板ウェブ橋の張出し架設工法
(※3) 端部を鍛造により円錐台形状に加工した機械式定着鉄筋
(※4) 材料に由来するCO2排出量を40%~最大90%削減する当社が開発した環境配慮型コンクリート
【「Rap-con for staging工法」の施工手順】
【波形鋼板ウェブとPCa下床版の接合部構造】
■今後の展開
当社は、「中期経営計画2022-2024」の基本方針の一つに「成長分野への挑戦」を掲げ、建設生産システムの深化による次世代建設生産システム「SMile 生産システム」の実現に向けて、建設現場の工業化・自動化に取り組んでいます。
今後は、本工法の更なる現場適用を進めるとともにPCa部材の活用等により、PC橋梁施工の更なる生産性を向上させてまいります。
<お問い合わせ先>
リリースに記載している情報は発表時のものです。
【参考】
■ 「Rap-con for staging工法」を初適用した工事の概要
工事名 | 新東名高速道路 山北皆瀬川工事 |
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発注者 | 中日本高速道路株式会社 東京支社 |
施工者 | 三井住友・大日本土木・フジタ特定建設工事共同企業体 |
工事場所 | 神奈川県足柄上郡山北町向原~神奈川県足柄上郡山北町皆瀬川 |
工事概要 |
総延長 1,524.0m |
【現場の全景と「Rap-con for staging工法」が初適用された工区】