- 土木
曲弦形式PC橋とは
吊床版橋、吊床版トラス橋(曲弦トラス橋)、張弦桁橋、張弦トラス橋(複合トラス橋)など、曲線状の引張部材で桁を下方から支持する形式のPC橋です。
![]() 吊床版橋の架設 |
![]() 夢吊橋 |
吊床版橋
吊床版橋とは
橋台や橋脚の間に張り渡したPC鋼材を、薄いコンクリートで包み込んで床版とした形式の橋です。吊床版橋には、直路式と上路式の2方式があります。
特徴
- 材料の強度をフルに活かした構造で、部材が薄いため、使用材料が少なく、経済性に優れています。
- 吊橋などに比べ、剛性が高く、揺れにくい構造です。
設計
直路式吊床版橋は、ケーブル理論を用い、上路式吊床版橋は微小変位理論を用いて設計します。
施工
吊床版セグメントを、支保工を使用せずに、ウィンチを用いて懸垂架設します。
実施例
![]() 亀甲橋 |
世界初の三方向分岐直路式PC吊床版橋 【亀甲橋】(土木学会田中賞)(FIB賞) 架橋位置:三重県 橋長:136.0m 最大支間:75.0m 完成年:1991年 |
![]() 交流橋 |
上路式吊床版橋 【交流橋】 架橋位置:岐阜県 橋長:94.0m 最大支間:82.0m 完成年:2001年 |
![]() 潮騒橋 |
世界初の連続構造上路式PC吊床版橋 【潮騒橋】(土木学会田中賞) 架橋位置:静岡県 橋長:232.0m 完成年:1995年 |
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我が国最大のPC吊床版橋 【夢吊橋】(土木学会田中賞) 架橋位置:広島県 橋長:147.6m 完成年:1996年 |
自碇式吊床版トラス橋(曲弦トラス橋)
自碇式吊床版トラス橋(曲弦トラス橋)とは
吊床版の上にトラス斜材を介して主桁(上床版)を載せ、吊床版の引張力を主桁に取らせる自碇式曲弦構造の橋です。全体構造のねじり剛性は、主桁と吊床版により付与します。
![]() 構造の概念 |
![]() 吊床版セグメントの懸垂架設 |
![]() 主桁セグメントの送り出し架設 |
特徴
- 幅が60m~100mの渓谷などに、道路橋を単径間で架橋する必要がある場合、桁橋などに比べて経済的です。
- 支保工を使用せず、張り渡したケーブルを利用して懸垂架設するため、深い渓谷でも建設できます。
- 架設速度が速く、夏場だけでも架設を完了させることができることから、積雪寒冷地でも有利です。
- 自碇構造であることから、架設地点の地盤条件に左右されずに建設できます。
- 橋体が小さな部材で構成されているため、架橋地点や搬入路が狭くても建設できます。
設計
自碇式吊床版トラス橋の設計は、骨組み解析を用いて容易に行うことができます。
施工
- STEP 1 吊床版セグメントの懸垂架設
- STEP 2 主桁セグメントの送り出し架設
- STEP 3 主桁、吊床版の間詰め部を施工
- STEP 4 他碇構造から自碇構造へ構造系変換、完成
実施例
![]() 巌門園地園路橋 |
世界初の自碇式吊床版トラス橋 【巌門園地園路橋】(土木学会田中賞) 架橋位置:石川県 橋長:39.0m 完成年:2001年 |
張弦桁橋
張弦桁橋とは
主桁の下方に鉛直材を介して張弦ケーブルを張った自碇式曲弦構造の橋です。
特徴
一般的なPC桁橋よりも桁高が低く軽量のため、経済的です。
設計
骨組み解析により断面力を算出します。
施工
架設ガーダーなどを用いて架設します。
実施例
![]() あゆみ橋 |
我が国初の張弦桁橋 【あゆみ橋】(PC技術協会賞) 架橋位置:静岡県 橋長:39.0m(178.13m) 最大支間:37.0m( 79.00m) 完成年:2001年 ( )は、斜張定着張弦桁橋を含む橋長、最大支間 |
張弦トラス橋(複合トラス橋)
張弦トラス橋(複合トラス橋)とは
主桁の下方にトラス斜材を介して張弦ケーブルを張り渡した自碇式弦構造の橋です。コンクリート部材で補剛した張弦材を、トラス斜材を介して主桁の下方に張り渡したタイプもあります。全体構造のねじり剛性は、主桁により付与します。
施工
基本的に主桁を架設してから張弦ケーブル(張弦材)を設置しますが、主桁架設中に張弦ケーブルで桁を支持する場合もあります。
実施例
![]() 青雲橋 |
長支間の道路橋としての張弦トラス橋 【青雲橋】(土木学会田中賞)(FIB最優秀賞) 架橋位置:徳島県 橋長:97.0m 最大支間:93.8m 完成年:2004年 ( )は、斜張定着張弦桁橋を含む橋長、最大支間 |
二重張弦桁橋
二重張弦桁橋とは
一次ケーブルを用いて主桁セグメントを懸垂架設し、張弦ケーブルを架設・緊張した後、自碇構造に変換して完成させる張弦桁橋です。
![]() 二重張弦桁橋の概念 |
![]() 一次ケーブルと張弦ケーブル |
特徴
- 幅が60m~80mの渓谷などに単径間で架橋する必要がある場合、桁橋などに比べて経済的です。
- 支保工を使用せず、張り渡した一次ケーブルを用いて懸垂架設するため、深い渓谷でも建設できます。
- 架設速度が速く、夏場だけでも架設を完了させることができることから、積雪寒冷地でも有利です。
- 自碇構造であることから、架設地点の地盤条件に左右されずに建設できます。
- 橋体が小さな部材で構成されているため、架橋地点や搬入路が狭くても建設できます。
設計
二重張弦桁橋の設計は、骨組み解析を用いて行います。
施工
- STEP 1 一次ケーブルの架設
- STEP 2 主桁セグメントの懸垂架設
- STEP 3 張弦ケーブルの架設・緊張
- STEP 4 他碇構造から自碇構造へ構造系変換、完成
実施例
![]() 青春橋 |
世界初の二重張弦桁橋 【青春橋】 架橋位置:群馬県 橋長:60.1m 完成年:2006年 |